第8話 魔王軍①
カン、カン、カンと鐘の音が鳴る
そして魔法で作られているスピーカーのような物から切羽詰まったような声が聞こえてきた
『緊急避難警報!緊急避難警報!町の付近に魔王軍が襲来しています!城壁付近に居る方は今すぐ避難を!』
一拍置いて叫び声や悲鳴が聞こえてくる
「マニュラ、ホープを連れて先に家に帰っておいてくれ」
そんな中まるで緊張感を感じさせないような声が聞こえる。クレンだ。クレンは全く慌てたり顔色が変わっているようなことなく俺達を見つめている
「貴方、大丈夫、なんですよね?」
マニュラが心配そうにクレンに聞く
もしかしてクレンは今放送で聞こえた魔王軍の元に行こうとしているのか?魔王軍って、俺のイメージだと強いんだけど、もしかして弱かったり。でもそれだとこの悲鳴はおかしいよな
「勿論!すぐに終わらせてくるよ」
クレンが笑顔でそう言うとマニュラはほっとした表情になった
「ホープ、家に帰るわよ」
そう言われて手を引かれるが、俺はずっとクレンの後ろ姿を見つめていた
これって、いわゆるフラグというやつなのでは?クレン死ぬのでは?今のはフラグ建築早すぎないか?
ぐんぐんと離れていくクレン。下手したら車と同じくらい速度が出てるんじゃないかってくらい早い。俺はその後ろ姿に何か胸騒ぎを感じた
「ホープ?帰るわよ?」
後ろをずっと向いている俺にマニュラが話しかけてくる
俺は今どうしようもなく嫌な考えが浮かんでいる。クレンは死ぬのではないか?もう帰ってこないのではないか?そんな思いがずっと頭の中に出てくる
転生者だからとは言え何年も過ごしていれば情が沸いてくる。クレンもマニュラも今では俺の大切な人だ。そんな人が今死ぬかもしれない
気が付いたらマニュラの手を降りきって走り出していた
「ホープ!?駄目よ!戻ってきなさい!」
マニュラが叫ぶが今マニュラは妊娠中。早くは走れないだろう。実際追ってはこれていなかった
避難している人に時々当たりながらクレンが向かった方向にひた走る
そうして段々城壁が見えてきて、聞こえてくる誰かの大声
「我は魔王軍四天王の一人!【破壊のゴルジ】!魔王様の命令により今よりこの町を支配下に置く!抵抗するものは殺し!慈悲を乞うものは奴隷として扱ってやる!貴様らも額を擦り付け慈悲を乞うなら配下を少々殺したのは見逃してやろう。我は待つのが苦手なのだ。決断は早くしろ」
腹に響くような声が聞こえてきた。声の主は筋肉の塊のような見た目の人型、人間と違うのは白目が黒い事と禍々しい角が額から生えていること
魔王軍の四天王、だと?そんなのが何でこの町に来たんだ。っていうかそんなの相手にクレンが勝てるのか?普通に考えたら無理だろ
「あー、四天王のゴルジさん?悪いが答えはノーだ。悪いな、こっちは妻と息子にもう一人できるもんでな」
「そうか。なら死ね」
遠目からでもわかるほどの大群がこの町に攻めてくるのがわかる。少なくとも一万人はいそうな魔物の大群が町に、クレンに目掛けて来る。だがクレンは怯えたような表情もなく両方の腕を使って魔方陣を描く。そして描きながら詠唱も聞こえてくる
『来たれ、来たれ、全ての万物を揺るがすものよ。来たれ、来たれ、この世の理を犯すものよ
全てを穿ち、空を震わせるものよ。この世を喰らい、蹂躙するものよ
我が求めるは空の覇者、我が求めるは凌辱の王
召喚、【煌竜ジルヴァ】!【喰王ベールゼ】!』
唱え終わる頃にはクレンの周りいくつもの魔方陣が取り囲み、見えなくなるほど光を放っていた
そして光が収まったあとには、巨大な神々しく輝く巨大な竜と、同じほどの大きさのスライム、だと思われるものがいた
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