第79話 激戦と乱入
コロネとイリスが参戦し、四人でユースティアと戦うことになったレイン達。
盾役のコロネ、中衛のエルゼ、そして後方支援のイリス。レインはそんな中にあって攻めの役を担うことになっていた。
『罪丸』の力によって魔人化した今のレインのもつ力はエルゼ達にも届くレベルだ。今のユースティアであってもレインの一撃は無視できないレベルのものになっていた。
「っぅ……邪魔だっ!」
「させません!」
「くっ」
ちょこまかと動き回るコロネを振り払おうと魔法を放つ姿勢に入ったユースティアを邪魔するようにエルゼが魔法を放つ。ほとんど無詠唱で放たれる上級魔法の威力は無視できないものだ。
ユースティアが大きな一撃を放とうとすれば、前衛にいるコロネが懐に飛び込み攻撃をしかける。そしてそんなコロネに気を取られてしまえばエルゼの魔法が、レインの銃が襲いかかる。
先ほどまでレインとエルゼの二人で戦っていた時とは大違いだ。
今のユースティアは完全に防戦へと追い込まれていた。しかし、逆に言ってしまえばこの四人で同時に攻めてもユースティアを攻め切ることはできないでいた。
どう攻めてもたくみに躱され、迂闊に踏み込めば今度はレイン達の方が反撃をくらうことになる。だからこそ安易に大胆な攻めの選択肢を選ぶことはできなかった。
しかし、こうしている間にもどんどんユースティアは力を増している。今は拮抗しているものの、それもいつまで続くかわからない。懸念点はそれだけではない。
今盾役をこなしているコロネ。最前線で直接ユースティアと拳を交わすコロネの負担は他の三人の比ではなかった。適宜エルゼがフォローに入ったり、回復を行使しているものの、それだけで補えるほどユースティアの力は甘くない。
このままではいずれ拮抗状態が逆転するのは目に見えていた。しかし、不意にユースティアの動きが鈍る。
「? なんだ?」
「くぅ……どこまでも邪魔をする……」
最初はユースティアがわざと生み出した隙かと考えたレイン達だったが、そうでないことにいち早く気付いたのは特別な目を持つイリスだった。
「違いますレインさん。あれはきっと、ユースティア様です」
「それはどういう……って、まさか!」
「はい。彼女の中で本当のユースティア様が抵抗しているんです」
「そうか……そういうことなら」
それまで圧倒的な力を振るっていたユースティアがようやく見せた隙。それはレイン達にとって明らかに千載一遇のチャンスだった。
一気に攻め切ろうとしたレイン達だったが、この場にいたもう一人がそれを許すはずもなかった。
「それはさすがにダメですねぇ」
「っ!」
横から割り込むように飛んできた魔法に行く手を遮られ、コロネとエルゼは後ろに下がることを余儀なくされる。
そんな二人の前に立ち塞がったのは、ドートルだった。
「全く。まさかこの後に及んで抵抗するとは。驚異的な精神力というか。大丈夫ですかユースティア様」
「ドートル……邪魔をするな」
「邪魔をしたつもりはないんですけどね。どちらかというと忠臣が主を助けた、といった所でしょうか」
「お前が忠臣? はっ、笑わせるな。獅子身中の虫の間違いだろう。私だけでなく母様のことも、いつ寝首を搔こうか考えていても不思議じゃない」
「はぁ、信用ありませんねぇ。これでもフィリア様には本気の忠誠を捧げているのですが。ご安心ください。裏切ることなんてありえませんから。そして今この忠誠はあなたにも捧げられています。それはもう間違いなく」
「ふん」
ドートルに助けられたという事実に明らかに不満そうな表情をするユースティア。
「ドートル博士……」
「やぁ、久しぶりだねイミテル……いや、今はイリスだったかな。うんうん、いい名前じゃないか」
話している人の神経を逆なでするような声音でドートルは語りかけてくる。
「どうしてあなたがここにいるんですか。あなたは表に出てくるような人ではないでしょう」
「うーん、それは誤解かな。必要であるならわたしだっていくらでも動くし、表にだって出てくる。それが好きかどうかは別にして。今回は私の主直々の命令だったからね。ちょうどいい機会だし、こうして出てきたわけさ。あのディアボロスの試運転を兼ねて」
「ディアボロス……あの機械兵のことか」
隣で話を聞いていたレインはディアボロスという名を聞いて、先ほどエルゼと共に倒した機械兵のことを思い返していた。
「そうそう。まさか倒されるとは思ってなかった。いやはや、私もまだまだ聖女を甘く見てたんだろうね。そこは素直に称賛しよう」
「お前に褒められても全然嬉しくねぇよ」
「ふむ。ずいぶん嫌われたものだね。君には何もしてないと思うけど」
「何もしてないだと?」
根本的な所を理解していない、いや理解するつもりがないのであろうドートルの様子にレインは苛立ちを覚えた。
「個人的には君にも興味があるんだけど。まぁさすがに優先順位というものもある。悪いけど、今回ばかりは失敗は認められないしね」
「ふざけるな。ティアのことは返してもらう。絶対にだ!」
「ふふ、良い啖呵だ。ならこっちも直接君達の力を試させてもらうとしよう。そのためにも、久しぶりにわたし自身の力を解放させてもらおうかな!」
「「っ!!」」
その場を飲み込む圧倒的な力の奔流がドートルの体から放たれる。
「魔人を超えた『魔神化』の力。君達がどこまでわたしに通用するか、ぜひみせてくれ!」
喜悦の笑みを浮かべながら、ドートルはその力を解放した。
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