「手」


俺が通うコンビニが、何やらオーナーの趣味だとかで

とある日からレジカウンターからカーテンを吊るし

接客する店員の顔が見れない状態になっていた。

まるでパチンコ屋の換金所の様な印象だ。

特に気にする事なくいつも通り欲しい商品を手に取りレジまで持っていく。

すると綺麗な女性の手が、カーテン越しに商品を受け取り

ピッピッと次々に商品のバーコードを通す音が聞こえ

カーナビの案内の声の様な棒読みの女性の声で「合計3点で、〇〇円です。」と

言われトレーが今度は、カーテンからトレーが出てきてお金を乗せると

綺麗な女性の手は、トレーを受け取りおつりを乗せたトレーと商品が出てきて

また棒読みの女性が「ありがとうございました。またのご来店をおまちしております。」


商品とおつりを手に取り帰宅する。

店長の意図はわからないが、このコンビニの斬新な発想とあの綺麗な女性の手に

興味が沸いた。

恐らくあの棒読みの声は、

カーナビの案内の様な物でレジから発せられた物なのだろう。

そう言えば数日前にオーナーがレジを弄ってたっけ?


色々自分の中で考察が飛び交う。

以前オーナーが趣味でやってるようなものと言ってたし

接客が嫌いで変わり者のオーナーのせいか

幸いあまりこのコンビニには人が寄り付かない。


前にも立ち読みだけする高校生に嫌がらせで、漫画雑誌の中にゴキブリを忍ばせて

驚かせたり。

悪質な酔っ払いが何度か店で騒いでた時には、何週間も賞味期限が過ぎた廃棄弁当などをプレゼントしてたり。

綺麗な女性が来店すると、何度も事務所に連れ込もうとしたり。

ちなみに僕も何度か来るなと怒鳴られた事もあったり・・・。

苦情が来ても何されるかわからないオーナーだから

近所の住人達はこのコンビニには絶対に行かない決まりがあったりと。

よく潰れないな・・・。と感心する程


まぁ無茶苦茶なオーナーだから、どんな発想されても驚きやしない。

ただあの女性がどんな人か気になって仕方なかった。


次の日もまたコンビニに立ち寄り適当に、朝ごはんのパンを手に取り

レジへ向かう。

すると今度は、また別の女性の手がカーテン越しから商品を受け取り

昨日とは少し高い声で「1点で〇〇円です。」と言われた後に

またカーテン越しからトレーが出てきて

丁度の金額を置くとトレーは引き上げられ

商品が出てきて棒読みの高い女性の声で「ありがとうございました。またのご来店をおまちしております。」


益々僕は、オーナーの策略にハマりそれから毎日来る日も来る日も

このコンビニに通った。

時には、男性の手が出てきては、何故か落ち込んで。

時には、綺麗な女性の手が出てきて心の中でガッツポーズをして。


それから1週間位の事だった。

いつもの様にコンビニへたどり着くと多くの警察官がコンビニ内を捜査しており

野次馬の人だかりで溢れていた。

「何かあったんですか?」

僕が野次馬に問いかけると一人の女性が答えてくれた。

「いやね、なんでも最近この辺で行方不明が相次いだらしくて」

はぁ。と僕はその話とこのコンビニの話がどう関係あるんだよと心の中で突っ込んでいると女性は、何か憐れむようにコンビニを見つめながら話した。

「なんでもね、あそこで泣き崩れてる人の娘さんがコンビニに行ってくるって言ったっきり帰って来ずで、警察に相談して捜査したら出てきたんだって。」

見つかって良かったですね。声に出そうとした時だった。

「レジのカウンターにカーテンが合ってそれをめくると無数の手があったんだって。」


無数の・・・手?


「今警察の人が調査中で、なんでも趣味らしいの。

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