第6話 その涙さえイロイロ色

 あめへ

 いろえんぴつあげるね



 ぴちゃん

 水色の雫。ぴちゃん、次の岩からしみでるのはうす桃色だ。そのまま頬に当たり、カクは顔をしかめた。



「カク、目を覚ましたらそこの飲んで」



 聞きなれない男の声。口々に不満を言う声が騒がしくなっていく。



「ダンナヒドイ!」


「またダマした」


「バカダンナ」



 カクが目を開けると岩肌が見えた。黒い岩の隙間にいろんな色の岩が見え隠れしている。



「あの、あなたは?」


「飲んで」


「はあ…?」



 岩のテーブルには湯気の立つ白い液体、想像どおりのホットミルクだった。何のかはわからないが。飲んだのを確認しダンナはカクのそばにくる。その後ろを子どもの半分の背丈の青い肌の生きものが10人ほどついてくる。



「君、アメには会ったかい?」


「はい」


「うん。僕の娘なんだけどね」


「あなたがお父さん!」


「君にお父さんと呼ばれる筋合いはないよ。でもアメの涙は見たくない。まだ君が必要だ」


「俺、ここに迷ってきたんです。だから」


「ここは自分の居場所じゃないと?」



 カクの頭に今度は黄色の雫が落ちる。ぴちゃん、遠くの岩に青い雫が弾ける。



「じゃあもう少し迷っていようよ」


「でも」


「僕も迷ってるから。あ、そういやあんまりアメに物あげすぎないでよね」



 父はそうして娘の自慢話をしばらく話した。毛布もないのに岩肌が暖かい。




 色のあふれる世の中

 涙で色がぼやける

 透明ならみえない

 いろんな色のいきものが

 いろんな顔をして生きている


 時にはブルーでもいい

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その涙さえ命の色 新吉 @bottiti

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