第5話 その涙さえ命の色

 白紙の上に

 生まれる色



 アメがカクの家に来る目的は他にもある。イロエンピツを使って絵を描くことだ。あまり上手くないがとてもたのしそうだ。青い空と木、その枝で居眠りしている青い小人が描かれてる。



「それがお父さんか?」


「ううん。リブーゴさんたち、たまにはひなたぼっこしたいと思うので」


「ふーん」



 彼女が描くもののだいたいはカクが見たことがないものだった。たった今その隣にボコチが描かれた。



「これは知ってる、ボーちゃんだ」


「そう!」



 アメを見送り皿を片付けて、カクも家を出る支度をする。その頃には窓の外のアメはミゾレになっていた。



「山に行ったら迷うだろうな」



 彼はイロエンピツでアメに手紙を書いた。涙が一雫落ちる。ばたんと扉が閉じ、あっという間に暖炉が乾かした。


 道中ボコチ飼いのカーサに出会う。筋肉質の男性だが、しっかりと防寒していた。



「カク、行くならこれ持ってきな」


「ありがとう」



 同じ皮のコートを受け取る。どこに行くのかは聞かれなかった。



「俺もまちもアメみたいに真っ白だ」



 深まる森といつしか降りしきる雪の中、カクは不思議と寒さを感じなかった。死ぬのかと思いながらも、歩みを進める。前いたところには戻りたくなかった。泣きそうな表情になるが涙はない。彼はそのまま雪の中に意識を手放した。



「「ヒトだ、ヒトだ!」」



 白の中で目立つ青色の何かがわらわらとやってきた。小さな彼らは5人ほどでカクを担ぎ、岩穴のねぐらに連れていく。

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