第4話 その空さえイラナイノ
空に舞い上がる
羽はなくとも
今日はアメ、きっと雪になるだろう。曇り空はビニール袋が枝に引っかかっているイメージが強い。ここでは絶対見られない景色だ。
いつか俺がもってたビニール傘をアメにあげた。ここでは頭にのせる三角の傘しかなかったからアメは驚いていた。俺は登山するつもりなんてなかったから、リュックにはテキトーなものしか入れなかった。
ただの袋にもアメは驚いて喜んだ。買い物したものを入れるんだといった。私はかごを使いますって見せてくれた。お父さんと一緒に作ったらしい。どうやってビニール袋を作るのか聞かれたけど、俺にはわからない。
俺は趣味のお菓子作りをして過ごした。お礼にいろいろもらえた。いつしか食べにきてくれる染師の女性に恋をした。お世話になっているアメに恩返しがしたいと、彼女に頼んで白い布を赤に染めてもらう。染める姿がかっこいい。できあがった布をビニールの上にのせ、傘の先の丸いキャップを再度差し込む。赤い傘の完成だ。俺はその傘をあらためてアメにプレゼントした。
「みんなにも作ろうよ!このびにーるって作れないの?」
俺には作れないよ。傘もビニールも染物もだ。ほんの少しお菓子が作れるくらい。
一緒に傘を作ってくれた彼女も俺を好いてくれたが、時々意味不明なことを話す俺を気にしていた。受け入れてはくれている。だけどわかってしまう。ここに俺はイラナイのだと。
世界でアメ一人だけだ
俺を本当に怖がらないのは
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