第3話 その雨さえノイローゼ

 透明なものは嫌い

 色がほしい



 アメはわからないことをカクに質問した。だがカクがわからない言葉を喋るから、余計に質問が増えることも多かった。


 ある日突然カクはやってきた。迷い込んだようだった。



「まちに出かけませんか?」



 そうカクを外に連れ出したのがアメだ。宿屋にいる旅人と話をするのを楽しみにしているまちの人も多い。アメもそのひとりだ。だがわけありの人もいる。細かいことを気にできないアメを宿屋のおばちゃんが止めた。



「アメちゃん、この人は…」


「大丈夫ですよ、ボコチってなんだい?」


「こっちです」


「旅人さん、あんた高いところは大丈夫かい?」


「…なんで?」


「空を飛ぼうよ」



 ボコチは一人乗りだ。カクは言われるまま、足を乗せ首輪をつかんだ。瞬間、アメの指笛が響く。バサアッと翼が大きく広がり、



「うわああああああああ!」



 カクは必死に手綱をつかんだ。胸の高鳴りが落ち着ついたころ、ゆっくりと目を開ければ小さなまちが見えた。山から川が流れて遠くには海も見える。降りていくと家の屋根や、他のボコチ、色鮮やかな鳥と色づいた木々、こちらに手を振る人たちも見える。




「カクさんはどうしてここにきたんですか」


「わからないんだ。ガヤガヤした色の中でノイローゼになってて。山登り中に突然ここについた。空気も澄んでるし、いいところだ」


「のいろーぜって何?」


「ふふ、ひとりでこもって暗くなって悪いことばっかり考える」


「悪いやつだね」


「そうだな」

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