第2話 その空さえあなたの色

 空はカラフルなようで

 実は色がない



 アメは目的の家へとたどり着いた。ボコチを外の柵へつなぐ。コンコンと音を立て戸を叩くアメ。



「どうぞ」



 中から男の声が聞こえる。控えめに開けると温かい空気と甘い匂いがふわっと広がった。



「ほら早く、寒いじゃねえか」


「ごめんなさい、カクさん」



 カクと呼ばれた男は少し怖い声でアメを急かす。暖炉の前に座るカクのそばの椅子へ招かれ、そおっと座る。テーブルにはアーナッツがおいてある。パンを揚げて砂糖をまぶしたお菓子。アナが空いている。このカクが作ったものだ。今できたてだが、初めてこのまちで作ったのもこの人だ。



「いいにおい」


「いつもできたてに来るなあ」


「メーワクですか?」


「違う違う、タイミングがいいなってこと。冷めた頃よりずっといい」


「たいみんぐ?」


「なんて言ったらいいんだ、こう、時というか瞬間というか」


「わかんないけど、いいこと?」


「そうだ」



 カクの作ったアーナッツを頬張り、あったかいお茶を飲む。色の違う二個目に手を伸ばそうとしてハッとするアメ。



「お菓子食べに来たんじゃないんです」


「ふふ、うん」


「本当です」


「分かってるよ」


「カクさん、どうして雪がふらないんですか?」


「マイナスサンドイカにならないんだろう」



 よく分かっていないアメに説明する気がないカク。アメの白い頭を撫でながら呟く。



「雪が降ったら空も地面もアメと同じになるな」


「そうですね毎年真っ白です」


「そりゃ早く見たいな」

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