最終話
あれから二年の月日が過ぎた。
誘導はすっかりこの世から姿を消した。
誘導兵器は使い物にならなくなり、
誘導具が使えなくなったことによる日常生活の大きな変化も相まって、
各国は戦争をしていられる状況ではなくなった。
誘導のために戦争を続けてきた王だが
誘導がなくなったことにより、実質無意味な争いをしていたとして
民の大きな非難を浴びることになり、失脚を余儀なくされた。
ゼルグラード族は金の剣の一族と銀の盾の一族と分かれていたのが、
元通り一つの一族となって、また活動しているようだ。
一時、長が二人いる状態になったが今は実質、あの若くてつかみどころのない
リュー族長が実権を持ち、指揮していると聞く。
誘導がなくなった今も変わらない生活を送っているようだ。
ちなみに隠れ里に取り残された人はおらず、全員無事脱出したとのことだ。
それと、洞窟は完全に崩壊してしまっており、
中に入るどころか洞窟そのものが無くなったといってもいいほどの有様だとか。
まあ、もとより戻るつもりもないし、それでよいのだろう。
ヘルたちは王国の命で捕まえられたのだが、
そのアジトで戦争孤児たちを匿っていることが判明した。
盗みによる金で養っていたようだ。
その善良な行いと、今後二度と盗みをしないことを条件として
今は戦争孤児たちを引き取って世話する活動をしている。
アガネスは戦争がなくなり、自警団として活動をしていた。
ヘルたちの逮捕に一役買ったが、そのヘルたちの行いに感銘を受けたのか、
今は戦争孤児の保護に尽力しているようだ。
実はヘルたちの罪を不問とさせ、
戦争孤児保護活動の強化を提唱したのはアガネスだ。
しかも、その後アガネスとヘルは結婚し、四人の子供まで作ることになる。
まったく何が起こるかわからないな。
そういえばヘルは偽名で本当はイザベルという名だそうだ。
ちゃんと女性らしい名前をしている。
フリーは脱出後、とても不安定な状態が続き、
いつ死んでもおかしくない状況だった。
だが、誘導の研究者であるフリーの両親とゼルグラード里長の
努力のかいあってか、今では前と変わらない生活を送れるになっていた。
いや、正確にはまったく同じとは言い難いが、
それでもフリーは今までと変わらない振る舞いをしている。
フリーをここまで回復させたのは、新たに開発された誘導体質の人のための薬だ。
今、フリーはこの薬を必要とする誘導体質の人に、薬を届ける活動を行っている。
自分と同じような境遇の人を助けたいと努力しているようだ。
この薬は”ポーション”と呼ばれ、長い間使われることになる。
そして、私はというと、国に帰ってからはフリーの回復のために
いろいろと走り回っていた。
そのうちに王が失脚することになった。
私はそれに伴い王政はなくなるものだと考えていた。
実際、王政は撤廃になり、民主政になった。
私の王子としての役目はないものだと思っていた。
しかし、軍部(主にアガネス)と誘導開発部(主にフリー)この国政の大多数を占める
二つの部門の強い要望により、私はこの国の最高指導者になることとなった。
今は、他の国との友好関係を気づくことや治安維持に力を入れている。
そして、今一番積極的に取り組んでいることは、
誘導具に代わる新たな技術の開発だ。
その一つとしてデイビスさんが使っていた技術を取り入れようと考えた。
デイビスさんは争いに使わないのであればと消極的ではあるが協力してくれた。
今後、私やフリー、アガネスたち、この国がどうなっていくのかはわからない。
だが、同じようなことは繰り返さない。
もし、同じように世界が滅びる。
そのようなことが起きそうならば、
たとえ文明が退化するとしても、
それを絶対阻止なければならない。
と私の思いを綴っておこう。
こんな私の冒険の話と
この世界の退化と新たなる進歩の物語はここで終わりだ。
最後まで付き合ってくれたことを、ここに感謝しよう。
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