四十九話
しばらく走ったが、今だ道は狭くて暗く、足場は悪いままだ。
時折地震も起き、砂ぼこりが落ちてくる。
だんだん地震が起きる間隔が短くなってきている気がする。
そんな中、私の横にいたフリーがこけた。
「大丈夫か、フリー!」と私はフリーに声をかけたが、
返事時はなく、起き上がる気配もない。
フリーの顔を見ると真っ白だった。
どうやらまた、体内誘導が失われてしまったらしい。
私は「里長、あの薬はありますか!」と聞いた。
「私は今持っていません。
ああ、フリーさんにいくつかお渡ししましから、お持ちになっているはず。」
そう里長が言ったので、私はフリーの鞄を開けてみた。
鞄の中には薬の瓶がたくさん入っていた。
しかし、そのすべてが空だった。
「駄目だ、どれもこれも空だ。」と私は鞄の奥まで探してみるが
やはり中身が入ったものはなさそうだった。
「そんな、十分渡していたはずですが。」と里長は驚いた。
足りなかったということか。それにしてもこの量を使い切るとは。
しかし、ないとなると担いでいくしかないか。
アガネスはヘルを背負っているし二人は無理だろう。
私はフリーを背負い上げた。
かなり衰弱しているようだった。
早く脱出しなくては。
私はアガネスほどではないが鍛えているつもりだ。
だが、この悪路をフリーを担いでいくとなると出口までいけるだろうか。
そんな私を見てか里長が
「王子、昨日王子が彼女を担がれていた様子を見ていました。
失礼ですが、おそらく出口まで体力が持たないと思います。
ですから、身体強化の誘導を提案致します。
短時間のみで負担も大きいのですが、どうしますか?」と提案してきた。
「迷っている時間はない。頼む!」と私はその提案を飲んだ。
「本当は私が代わってあげたいのですが……」と里長は言いつつ
鞄からグローブのような誘導具を取り出し私に渡した。
それを私は手にはめた。
すると、力が湧いてきて、体が軽くなったような感じがした。
「ごめんね。」とフリーは弱々しく耳元でそうささやいた。
「大丈夫だ、気にするな」と私は返した。
そして私たち五人、うち二名は背負われている状態で出口を目指した。
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