四十八話
外に出ると、天井から岩がゆっくりと崩れ落ちてきているのが見えた。
「付いてきてくださいこちらです。」と里長は速足で歩き始めた。
私たちは里長の後についていく。
「予想より早く崩落が始まってしまいました。
王子の行った封印は、とても強力なようですね。」
と里長は言い訳をするかのように言った。
里の門をくぐりまっすぐ道を進むかと思いきや、途中で脇の道にそれた。
「あちらの道じゃないのですか。」と
私は私たちがもと来たあの岩の階段の方を指さして、里長に尋ねた。
「ええ、あなた方の来た道は誘導で作られていますから、
今は崩壊して使えなくなってしまいました。
こちらの道は、誘導が発展する前のかなり昔に作られたものです。」
「そんな古い道で大丈夫なんですか。」とフリーが聞く。
「はい、道は狭いですが、いまでもちゃんと使えます。
と、着きました。暗いですがちゃんと付いてきてくださいね。」
そういって里長は人が二人並んで入れるかくらいの、
壁に空いた穴に入っていった。
そのあとをフリーと私。ヘル、アガネスと続いた。
その道は本当に暗かった。
ところどころ火がともってはいるが、前を行く里長の背中ぐらいしか見えない。
岩肌がそのままで、足場も悪く、
速足なのも相まって、たびたび転びそうになった。
しばらく進み、出口はまだなのかと思っていると、ものすごい地震が起きた。
上からパラパラと砂ぼこりが落ちてくる。
私たち五人は立ち止まり、倒れないよう踏ん張った。
突然「ぐあっ!」と後ろからヘルの声がした。
振り向くと、アガネスが地面に手を付け後ろを向いていた。
だが、声の主のヘルの姿が見えない。
「どうした。」と私が近づくと、地面に大きな穴があいていた。
その穴にヘルは落ち、アガネスが間一髪、落ちる前にヘルの腕を掴んだようだ。
いま、ヘルは宙に浮いた状態だ。
そのヘル腕をアガネスは怪我をした左腕で掴んでいた。
アガネスの表情は険しい。どうやら無理をしているようだ。
「俺のことはいい。手を放せ。」とヘルは言った。
「どんな奴からだろうと、盗みは盗みだ。罰が当たったんだよ。
それに、こんな状況だ。急がないと逃げ遅れるぞ。」
そうヘルは続けた。
だが、アガネスは
「いえ、見捨てるわけにはいけません。
前にも言ったが私はすべての人を守り救う。
だからこんな状況だろうと、私はお前を救う。」
そういって、アガネスはヘルを引き上げようと腕に力を入れるが、上がらない。
「よく言った、アガネス!」
私はそういい、アガネスの腕をつかみ、ヘルを一緒に引き上げた。
そして、何とかヘルを穴から引き上げることに成功した。
「よし、行くぞ」と私は進もうとしたが、
ヘルは起き上がろうせず、座り込んだままだ。
足を見ると右膝から血が出ている。
どうやら、穴に落ちた時、どこかに打ち付けたようだ。
「だから言ったろ、助けたところで俺はもう足手まといだ。
だから早くいけ――」とヘルが言い終わる前に、アガネスがヘルを背負い上げる。
「だから言っているが、見捨てるつもりはない!」とアガネスは言った。
同時に、地震がまた起きる。
私は「急ぐぞ!」と言い、私たちは一斉に走り出した。
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