四十七話
私たちは里長の家に用意された、客室で休むことになった。
フリーは封印の場から離れたことと、
里長から貰った薬のおかげか調子は戻ったようだった。
洞窟内なので時間感覚がわからなかったが、里長によると今は夜らしい。
明日の朝、里の民全員でここを出るとのことだ。
その時私たちも一緒に外に出るつもりだ。
なので今夜はここで寝ることになる。
客室にはベッドが四つ用意されていた。
少し狭く感じるが、久方ぶりのベッドだ。贅沢は言っていられない。
私たちはそれぞれベッドに横になり、眠りについた。
夢をみた。
またあの夢だ。
戦場、喚声、誘導兵器。
そしてあの閃光。
しかし、その光がはれると
目の前には辺り一面草木が生い茂る自然豊かな場所が広がった。
隣にはフリーとアガネスがいる。
二人とも微笑んでいる。
ああ、そうか。ついに誘導を封印できたのだな。
私の望みはかなった。
感謝するぞ、フリー。感謝するぞ、アガネス。
感謝するぞ、王子……
王子……王子……
「起きてください王子!」
その声で私はハッと目覚めた。
「やっと起きましたか王子。大変なことになっています。
さあ、早くここを出る準備をしてください!」
そう私を起こしたのはアガネスだった。
私は促されるまま、準備を進めながら
アガネスに今の状況について説明してもらった。
まず、今は正午前の様だ。
私はだいぶ疲れていたのか、長い間寝ていたようだ。
次に、大変なことが起きている。
それは、この里が崩壊し始めているということだ。
どうやら、この里のある地底湖の空間は誘導で補強されていたようで、
誘導がなくなったことにより支えが失われ、崩壊し始めているという。
確かに準備中、ゴゴゴゴゴという地鳴りや、ちょっとした地震が時折起きていた。
朝までは何事もなかったというから、それまでは持ちこたえていたのだろう。
里の人々はこれに早く気づき、早々にこの洞窟を出たとのことだ。
今は里長と里の民が数人、あと私たちのみがここにいるということらしい。
最後は、まだ誘導の封印は続いているということだ。
まあ、数年はかかると言っていたし、それはよいのだが、
剣は刺したままにしておかなけらばならないらしい。
抜けば、封印が解かれるかもしれないという。
しかし、ここが崩落すればおそらく回収することはかなわないだろう。
あの剣は、未来永劫、ここで誘導を封印す続けることになる。
だが、それでいいのかもしれない。
誘導が解放されることが無いほうがいい。
とまあ、そんな感じで状況を把握した。
さぁて、早くここを脱出しないとな。
私はアガネスと共に部屋を出た。
フリーとヘルはすでに準備を整え、里長とリビングで待っていた。
「やっと来たー!遅いよ王子ー!」とフリーは文句を言う。
「ったく、何やってんだ」とヘルは起こり気味だが、
ちゃんと待っていてくれていたようだ。
「お待ちしておりましたよ、王子。さあ早く、ここを出ましょう。」
そういって里長は、玄関の扉を開け、外に出て行った。
私たちは里長の後に続いて、家を出た。
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