最終章 終わりと始まり

四十六話

広場の天使像の横にある地底湖への道を下り、地底湖にかかる木の橋を渡り、

地底湖のほぼ中央辺りにある小島程のようになっている岩場まで来た。

里の民は湖のほとり辺りにいるのが見える。


「さあ、ここが誘導の源です。」


里長がそう言った。


確かに私でもわかるほど大きな力がここにあることが感じられた。


剣の白金の光も強さを増している。ついに封印か。


私はフリーとアガネスを見た。


「フリー、アガネス。今までいろいろなことがあった。

しかし、私たちはここまでたどり着いた。本当にありがとう。」


「どういたしまして!でも、これで終わりじゃないよ。」とフリーは言った。


「そうですよ、王子。これからが大変なのです。」とアガネスは言った。


「そうだな。これからもよろしく頼むぞ」と私は二人に言った。


私はアガネスの隣にいるへルを見た。


「ヘルも、デイビスさんによろしく伝えといてくれ。」


「ああ、そうだな。機会があったら伝えとく。」とヘルにしては珍しく、

素直に返事をした。


私は腰に差した剣を取り出す。


「さあ、ここが私たちの冒険の終点。ピリオドだ!」


私はそう意気込んだ。


「いい言葉ですね!刻んでおきましょう。」と里長は近くの岩に

『ここがおうじたちのぼうけんのしゅうてん ピリオド』と刻んだ。


なんだか恥ずかしいが、いいだろう。


私は気を取り直し、剣を構える。


ん?そういえばどうやって封印するんだ。


そう思って里長を見る。


「さあ、どうぞ。一思いにやってください。」と里長はいう。


伝わらなさそうなので、私は恥ずかしながらどうやるか里長に尋ねた。


「え!分かんないの!?」とフリーが声を上げた。


アガネスとヘルはやれやれといった表情だ。


里長は「いや、私も知らないですね。」と、答えた。


ここにきて、まさかの手詰まりになってしまった。


「とにかくいろいろ試してみたらどうだ?」とヘルが言ったので

剣を上に掲げてみたり、振り回したり、突きをしてみたり、

縦や横に構えてみたりといろいろやったが、

どれもこれも正解のような気がしなかった。


そんな私を見たフリーが

「王子、誘導をもっと感じてみたら?こう、目を閉じて……

体のうちに流れる力を感じて、集中するの。」とアドバイスをくれた。


私はフリーのアドバイスに従い目を閉じ、集中した。


すると、自然と体が勝手に動き、剣の刃を下に向け――


思いっきり、岩の地面へと突き刺した。


その瞬間、剣は眩い白金の光を放ち始めた。


その逆に周りからは光がだんだんと消えてゆく。

誘導が剣に吸収されて行っているのだろう。


「すごいぞ、本当に封印されていっている!」と里長は興奮気味だ。


街の方の家の明かりも消えていっている。


剣は今だに光ってはいるが、周りがだんだん暗くなってきたので、

この時のためにと用意していたランタンに火を灯す。


「これで……いいのか?」

と、私は岩場に深く刺さって抜けそうにない剣から手を放し、みんなを見回す。


「いいんじゃない?周りの様子的には封印されてい――」

ドサ!とフリーは話している途中でその場に倒れた。


「フリー、大丈夫か!」私はフリーを抱え起こす。


「あはは……やっぱり影響は無くないみたい。」


そういうフリーの顔は蒼白だ。


「すぐにこれを飲んでください。」と里長は

青い透明の液体が入った瓶を取り出した。


フリーは言われるがままその液体を飲むと、少し顔色がよくなった。


「里長、これは?」と、私はそう尋ねた。


「これは誘導体質の人のために作った誘導を体内に取り込ませるものです。

詳しくはまた今度にしましょう。

今は早くその子をここから離したほうがいいでしょう。

封印は順調に進んでいるようですし。」


里長はそういった。


フリーはまだ歩けそうな状態ではなく、

アガネスは腕の怪我があるので(それでも私がと言い張ったが)

私がフリーを担いで、剣は源に刺したままにして私たちはこの岩場を後にした。

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