四十五話
私が壇上を降りた後、里長がまた話し始めた。
「王子さま、ありがとうございました。
さて、先ほどの話にもあったが、
誘導がなくなることについて不安に思う者もいるだろう。
しかし安心してほしい。
この誘導の源を封印してもすぐ全ての誘導がなくなるわけではなく、
大きな力を持ったものから順になくなっていき、
この世界からすべてなくなるのに数年はかかると予測されている。
そして、いつでも誘導がなくなってもいいよう我々は準備を整えてきた。
ですからどうか安心して下さい。
そして、ここから解放されることを大いに喜びましょう。」
その里長の言葉に里の民の不安は払拭されたのか、大きな拍手と歓声が上がり、
「ありがとう天使様!ありがとう救世主!」とか聞こえてくる。
「では、誘導が消え去る前に大いに誘導を使って宴を盛り上げましょう。」
と言って、花火の様なものが打ちあがる。
パーンと音がして火花を散らしてはじけると中から
精霊のような妖精のようなシルエットの光が飛び出し
会場を回るかのように踊りながら天から降りてくる。
誘導を使ったモーション花火だ。
誘導もこのような芸術だけに使われていてくれれば、と私は思った。
その花火を皮切りに、壇上ではいろいろなパフォーマンスが行われた。
宴は大いに盛り上がった。
フリーは料理をがつがつ食っていた。
こいつよく食ってるのに全然太らないよな、と私は見てて思った。
誘導を扱うのにエネルギーが必要なのだろうか。
アガネスはいつも通り冷静で、
時折槍を眺め、何か思っている様だった。
ヘルはパフォーマンスにあっけにとられポカーンとした表情をした後、
首を振って我に返り、また、パフォーマンスにあっけにとられるというのを
繰り返していた。
私はというと、
「救世主様、ありがとうございます!」と言いながら拝んだりする人を
止めさせながら、周りの様子を観察していた。
こう盛り上がってはいるが、やはり封印に反対の者はいるだろうと探した。
しかし、そのような様子の者は見当たらなかった。
この会場に来ていないのかもしれない。
出来れば理解してもらえるよう説明したかった。
などと思いながらも時間は過ぎていった。
そしてパフォーマンスも一通り終わったのか、里長が再び壇上に立ち話し出した。
「みなさん、宴は楽しめたでしょうか。ではクライマックス。
誘導の封印を行います。では、誘導の源へと移動いたしましょう。」
そういって、里長は壇上を降り私たちに
「誘導の源まで案内いたします。ついてきてください」と言ったので
私たちは里長の後に続いた。
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