四十四話
「皆の者!よく集まってくれた。」
天使像の前に置かれた壇上に里長が立ち、そう叫んだ。
「今日集まってもらったのはほかでもない、解放の時が来たのだ。
長らくここを守ってきたわれらだが、ついにその任から解放されるのだ。」
里長は解放という言葉を強調しつつ話を続ける。
「ここには天使様の力。いわば神の力である、誘導の源がある。
これを悪用されないため、我々は古くからここを守ってきた。
しかし、その勤めは永劫のものではない。
ここにいる多くの者は知っていると思うが、天使様は白金の光によって、
天界へと召された。と伝承にある通り、この誘導の源も白金の導きにより、
天界へ返され、我々は守りの任から解放されるとされてきた。
そして今日ついに、その白金の力を持った者がこの地にたどり着いた。
では紹介しましょう。
我々を解放してくださる、救世主を!」
そういって里長は先ほど壇上の近くの席に移動された私たちの中の私を見て、
壇上に上がってくるよう手招きした。
このような展開になるのはおおよそ予想していたので、
私は躊躇することなく壇上へと上がった。
里長が一歩下がりつつ、「何かお言葉を」といったので、
私は壇上の中心に立ってこう話した。
「ゼルグラード族の皆さん、初めまして。
私はヒル王国王子のレイドといいます。
皆さんの中に知っている方もいるかもしれませんが、
今王国は他国と多くの戦争を行っています。
また、その戦争の中で、多くの誘導兵器を開発し使用しています。
そしてついに先日、王国は身の毛もよだつほどの恐ろしい威力を持った
誘導兵器を創り出しました。
私はその威力を間近で見ました。その光景は今でも忘れられません。
そして、こう思いました。このままではいけないと。
このままでは全てが滅んでしまうのではないかと。
ですから私は誘導を封印することに決めました。
誘導がなくなることについて、反対の人もいるでしょう。
しかし、理解していただきたい。
封印することによって多くのものが救われるということを。
私からの話は以上です。」
そういって私は壇上から降りた。
会場から盛大に拍手……ではなく、まばらに拍手が送られた。
というのも、皆「誘導が封印されて大丈夫なのか。」とか
「どうなるか不安だ。」とか話していて、会場は少々どよどよしていた。
やはり、誘導を封印することに素直に賛同するものは少ないようだった。
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