四十三話
私は里長に言われたテーブルの席に座った。
同様にアガネスも私の対面の席に着いた。
フリーはちょっと周りを見てくると言って、そこら辺を駆けまわっている。
準備の邪魔しなければいいが。
ヘルは私たちのテーブルのそばに来たものの、
座らず立ったまま辺りを見回していた。
しばらくして、机などの設置が終わったのか、
食材や飲み物、調理器具などが運び込まれだした。
「お待たせしました。」と声がしたので振り返ると、里長が立っていた。
「治療誘導具を持ってまいりました。
いま手当しますので動かないでくださいね。」
そういってアガネスに直径7㎝高さ5㎝程の円柱の形をした誘導具を当てる。
青ではなく黄緑色の治癒誘導特有の色がその誘導具から放たれている。
徐々に傷口が塞がっていくのがわかる。
「直りが遅いですが、体質ですかね。睡眠効果の解除もしておきましょう。」
そういって、サークレットのような誘導具を取り出し、アガネスの頭に着ける。
治癒誘導具は損傷した体細胞の修復し、
かつ体内の誘導を活性化させ自己治癒能力を向上させる。
直りが遅いのはアガネスの体内誘導が少ないせいで、
自己治癒能力向上に効果が薄いからだろう。
その分、通常での自己治癒能力が高いともいえる。
「終わりましたよ。気分はどうですか?」
そういって、里長はアガネスの頭から誘導具を外す。
「だいぶ良くなりました。感謝します。」
アガネスは里長にそう述べた。
「いえいえ、もともとは我々のせいですから。」
里長はそういいながら誘導具を片付け、
「もうすぐ歓迎の宴が始まるでしょう。では。」と言い残し、また戻っていった。
だんだんと辺りから料理のいい匂いがし始める。
フリーが見回りから戻ってきて、私の横の席に座った。
「アガネス、治療してもらったんだ。よかったー。」
どこからか先ほどの様子を見ていたようだ。
「ヘルは座らないの?」
フリーはずっと立ちっぱなしのヘルに言った。
「誰がお前らと一緒の席に付けるかよ。」とヘルはフリーの提案を跳ねのけたが、
「立って、食事するの?」というフリーの言葉にヘルはしばらく考えた後、
しぶしぶと言った形で私たちに背を向ける格好でアガネスの横の席に座った。
そして間もなく、歓迎の宴が始まったのだった。
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