四十一話
金の剣の印があるそれは、ゼルグラード族長からの手紙だった。
手紙を見た初老の男は、「それは!」と驚いた様子だ。
私は渡すために近づこうとしたが、
「止まれ!本物かどうか、確かめねばならん。
その手紙を持っている者!お前だけこちらに来い。」
と男は慎重だ。
「本物に決まってるじゃない!」
そう反論するフリーだったが、
「黙れ!ほかの者は動くんじゃないぞ!」
と逆により警戒心を強めてしまった。
言われた通り、私一人で近づくことにした。
「王子。ここは私が。」とアガネスは小声でいったが、
「大丈夫だ、心配するな」と私は返した。
そして、男へ近づき、「確認してくれ。」と手紙を渡した。
男は私から手紙を受け取ると、注意深く手紙を観察し、
それから封をあけ、中を読み始めた。
しばらく読んだ後、
「疑ってすみませんでした。王子……いえ、救世主よ。
わが里にようこそおいでくださいました。」
と、男は頭を下げた。
相手の言葉からして私が王子だと手紙に書いてあった様だが、
救世主とは何のことだ。
なんにせよ誤解は解かれたようだ。
私は離れて待っていたアガネス達を呼び、
その間、男は歓迎の準備を始めるよう周りの人たちに指示を出していた。
「改めまして、私はここの里長、”リー”と申します。
先ほどの無礼、誠に申し訳ありません。」
里長は再度頭を下げた。
「いえ、気にしていませんよ。」と私は告げる。
「まったく、遺憾ですな。」とアガネスは里長をにらみつける。
「本当になんとお詫びすれば……。あ、立話もなんですね。
いま、歓迎会の用意をしています。そちらに向かいましょう。」
里長はそういって歩き出し、私たちは後について行った。
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