三十九話
アガネスはヘルの手当のおかげか、表情が少し和らいで見える。
私はそっぽを向いたままのヘルに疑問をぶつける。
「そういえばヘル。どうやってここまで来たんだ。」
それは当然の疑問だった。
ヘルは私の方に向き直り答える。
「発信器を取り付けたんだよ、つってもわかんねーか。
お前らの位置がわかる機械を使ったって言ったらがわかるか?
まあ、この山のふもとの近くでわかんなくなったから、
入り口を探すのに手間取って今やっと追いついたんだがな。」
そう説明した。私は続けて質問する。
「子分はどうしたんだ。姿が見えないが。」
襲われた時も、デイビスの研究施設の時も一緒にいた大男と小男がいない。
「ああ、あいつらは上にいる。ちょうど俺が階段を見つけた矢先に、
あの瓦礫の山だと思ったのがいきなり動き出してよ。
別の場所を探していたあいつらとは離れ離れよ。
それで、俺だけここに来たってわけだ。まったく勘弁してほしいぜ。」
ヘルはやれやれといった様子だ。私は次の質問に移った。
「で、これからどうするんだ?」
「こっそり付いていくつもりだったが、こうなってしまったら仕方ねえ。」
ヘルのその言葉に私は身構える。
「おいおい、別に何もしねえよ。もうその首飾りにも興味はねえ。
俺はおとなしく付いていかせてもらえればそれでいい。」
「何を考えているんだ。」という私の問いに対し、
「答える義理はねえな。」とヘルは答えた。
理由はともあれ、私たちに危害を加えるつもりはないらしい。
私はフリーとアガネスを見る。
「アガネス、大丈夫か?」
「はい、問題ありません。」
私の問いに、アガネスはそう答えた。肩の痛みも引いたようだ。
フリーはバッチりといった様子で私に親指を立てて見せた。
そして私たちはヘルを加え先を目指すことになった。
あのオブジェの向こう側、ちょうど入り口と反対側に
先への道が続いているようだ。
私は手に持ったいまだ白銀の光をほのかに放つ剣をしばらく眺めた後、
鞘に直した。
その様子を見たフリーはこう尋ねてきた。
「その剣すごいね!どうやって手に入れたの?」
「いや、私が趣味で作ったものだ。」と、味気なく私は答える。
「へー、そうなんだ。名前は?」
「ん?名前?」
「そう、作品名は?ないの?」
「そうだな。考えてなかったな。」
「こんなにすごい剣なんだから、なにかつけてあげなよ!」
「ふーむ。」
私は少し考えてから、こういった。
「”カトラス”ってどうだ?」
「カトラス?」
「そう、魔力滅道のなかで出てきたある一団からとった。」
「ふーん、いいんじゃない。」
自分から聞いてきたくせにフリーはあまり興味がない様子だ。
そんな話をしながら私たちは道を進んだ。
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