三十六話
下り階段を降りた先は平行な通路だった。
壁も床も天井も白く塗られ辺りは真っ白な空間だ。
老朽化のためかところどころひび割れが見て取れる。
どんな原理か分からないが、明かりらしきものが見当たらないにもかかわらず、
通路は明るかった。
その不思議な通路を進んでいると、広い空間に出た。
この空間も辺り一面真っ白だ。
中心には円柱の上に球体が浮いているオブジェクト、
その中心に続く道のように左右に直径1m程の柱が並んで建っている。
柱はさっきの迷路の門に似た精巧な装飾が施されており、立派だ。
柱の向こう側には壁が柱と同じように並んでいる。ちょっと不自然な造りだ。
そしてこれらはすべて白一色だ。
少し不気味に思いながらも私たちは中心に向かって進み始めた。
すると、シュイイインと音を鳴らしながら、
中心のオブジェクトの球体が突然すごい速さで回りだした。
私は不意に嫌な予感がし、隣にいたフリーを引き掴み、柱に隠れた。
次の瞬間、バシュという音がしたと思うと、
私たちのいた場所にビームがはなたれ、床はその熱で赤くなっていった。
アガネスは私と同じく危険を察知したようで、反対側の柱に隠れていた。
「え?なに?なに?」
二人で柱に隠れたため、必然的に抱きしめた形になっているフリーは
いまだ状況を把握できていない様子だ。
少し顔を赤らめている気がする。
「アガネス、大丈夫か!?」
そんなフリーは置いといて、私はアガネスに叫んだ。
「すみません、王子!本来ならば私がお助けするべきところを!」
「いや、無事ならばよい!」
アガネスも、問題はなさそうだ。
槍を構えて戦闘態勢に入っている。
私は慎重に中心を確認する。
いまだに浮いた球体は回転している。
「おいフリー、あれなんとかできるか?……フリー?」
私の言葉に我に返ったかのようにフリーは
素っ頓狂な声で「え!なに!?」と言った。
私は先ほどと同じ問いをした。
「うーん、難しいかな。
誘導の力なのは間違いないけど、あんな高出力のビーム見たことないし。
それに防御術って得意じゃないのよねー。」
と、フリーでもどうにもならない感じだ。
アガネスだけならば、避けて進めるかもしれないが、
先がどうなっているかもわからない。
かといって壊そうにも近ければ避けるまでの時間がなくなる。
そもそも壊せるのかもわからない。
何にしても球体を止める手段が無ければじり貧になるだろう。
しかし、ここにきて殺傷力のある仕掛けと来たか。
そろそろ里が近いのかもしれない。
もうすぐだというのにここで引き返すのか……
そう考えていると、
「ったく、どうなってんだよ、ここはよー。」と後ろから声がした。
この声は、と後ろを確認する前に、バシュ!とビームが声の元へ放たれた。
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