三十五話
まさかと思い後ろを振り返ると、上昇通路からと思われる洞窟の道が見えた。
「もしかして、戻ってきたのでは……」
とアガネスが私が思っても口に出さなかったことを言う。
「えー!どこかで間違えたのかな?」
フリーも飽きてきたようで、めんどくさいと顔に出ている。
「もしかしたら、間違いの方向に行くのかもしれません。」
アガネスは裏をかく作戦を提案した。
なるほどな、しかし、それでは問題が書かれている意味はあるのだろうか。
そう思いつつ、アガネスの案に従い、間違いだと思う方向へ進んだ。
そして、また入り口と同様の門が見えてきた。
今度こそ、と思ったがやはりその門の先は壁で
『1+1=? ← 2 10 → 』 と書いてあった。
「また、戻ってきたのー?」とフリーは完全にご機嫌斜めだ。
「おかしいですね。道中の問題は最初の道の問題とは異なっていました。
同じ道を辿ったわけではないはずですが。」
アガネスの言う通り、問題は最初とは違ったものだった。
違う道を進んだはずなのに、またここに戻ってきた。
「問題はただのひっかけなのではないか?」と、私は二人に言った。
「一理ありますね。今度は方角を確認しつつ進んでみますか。」
アガネスはそういい方位磁石を取り出すが、やはりというべきか狂っていた。
「大丈夫です王子。私が方向を記憶します。」
アガネスはそういうが果たして大丈夫だろうか。
私は心配しつつも、三度目の正直というしな。
三回目の迷路挑戦に臨んだ。
そして、入り口の門にたどり着いた。
「駄目じゃないかアガネス!」
「おかしいですね。どこかで斜めにでも進んだのでしょうか……。
申し訳ありません。」
やはりというか、結局どうしても入り口に戻されてしまう。
闇雲に進んでも埒が明かない。
どうしたものかと私は考える。
「ね、二人ともいい?」
ふいにフリーがそう言った。
「どうしたフリー、解決策でも浮かんだか?」
「うん、二人ともよく聞いてね。」
おいおい、本当か!
私はそう期待を持ったのだがフリーの次の言葉に私は唖然とした。
「この迷路、生きてるの!」
「……」
私とアガネスは顔を見合わせた。
そんな私たちをよそにフリーは話を続ける。
「あ、生きてるってのは揶揄ね。
この迷路誘導の力がかかっているのは分かるよね?」
壁は青白く光っていることから、誘導の力が働いていることがわかる。
「その力で、迷路は形を変えているの。入り口に戻るようにね。
だから、何をやっても、ここに戻されてしまうってわけ。
耳を澄ませばわかるけど、動いている音がするわ。」
私は耳を澄ませてみる。
確かに遠くの方でカタカタと何かが動いている音がかすかに聞こえた。
「すごいよねー。どんな技術なんだろう?」
未知の技術に感心しているフリーに私はこう尋ねた。
「なるほど、この迷路の仕組みは分かった。で、どうやって突破するんだ?」
そう、まだ解決法を聞いていない。
「フフフーン、誘導の力で動いているってわかれば、こっちのもんよ!」
そういって、フリーは壁の方に手のひらを向け、えい!と叫んだ。
ガガガガガガー
大きな音とともに目の前の壁という壁が崩れ落ち、だだっ広い空間が開けた。
フリーはどや顔で胸を張っている。
「ほんっと、こいつは誘導に関してだけは有能だよな。」
私はそうつぶやきつつ、私たちは目の前のがれきの山と化した壁を踏み越え、
この空間の中心辺りに来た。
「二人ともストップ!多分この辺り……」
フリーが私たちを呼び止め、辺りの地面を見渡す。
「あ、あった!」
フリーの指さす方向を見ると、下に続く階段があった。
「ふむ、この迷路は先に抜けるのではなく、
下への階段が隠されているタイプでしたか。」
アガネスは何かを納得している。
「今回はお手柄だなフリー。さ、先に進むか。」
私の言葉ににやけ顔のフリーを連れ私たちはその階段を降りて行った。
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