三十話
「で、どういうことなんですか」
私は再度、族長に問いかける。
「これは民の皆にも話していないことだ。」
族長は神妙な顔つきになって話し始めた。
「君たちは天使様の物語は知っているな。」
私たちはうなずいた。
「最後、天使様は眠りについたままだと聞いているか?」
「はい、起きることのなく眠り続けていると。」
フリーがそう答えた。
「実はその物語には続きがあるんだ」
それを聞きフリーは結構驚いた様子だ。私とアガネスは話に集中している。
「このことは民たちの誰も知らない。族長のみが知りえることなんだ。」
「そんなことを私たちに教えてしまっていいんですか。」
私はたまらず聞き返した。
「ああ、だが他言無用でたのむ。」
「分かりました。」
私はそう答え、フリーやアガネスを見る。二人ともうなずいた。
「で、その続きって?」
フリーが食い気味に聞く。
ぜき払いをしてから、族長は話し始めた。
「では……。村の人々をその身を犠牲にしてまで助け、
戦争を終わらせた天使を見た神々たちは、
その行いで天使の罪は償われたとお考えになった。
武器と防具は翼に戻り、天使の体に元通り取り付けられた。
天使は目覚め、村人たちは大喜びした。
村人たちは天使がここに残ることを望んだが、
神々たちは天使を天界に帰らせるべきだとした。
そして天使は白金の光に包まれ、天界へと帰っていった。
一枚の羽根を残して。」
私たちは静かに聞いていた。
「終わりだ。」
「え?おわり?」
フリーは残念そうだ。
「それで、殺すのをやめてくれたことと何が関係あるんです?」
私は思ったことを聞いてみた。
「さっきの光を見ただろう。あれは白金の光に違いない。
あのような神秘的な光は見たことがない。」
族長は少し興奮気味だ。
「白金の光は天使様が救われることを意味しているんだ。」
「つまり、私たちが天使を救うのだと?」
「そういうことだ。君たちは誘導を封印するといった。
つまり我々の部族全体を長年の呪縛から解き放ち、
天使様をお救いになるということだ!」
族長はニコニコしており、うれしそうだ。
「あのー、まったく話がみえてませんが」
「そうかもしれないね。」
私の問いに対しそういって、族長は話をつけ加えた。
「君の言った。いや、王子の言った我々が金の翼の一族であるというのは正解だ。
そして、銀の翼の一族。銀の盾の紋章の一族。
僕としたことがうっかりしていたよ全く。疲れていたのかな。
銀の一族。これも存在する。そしてこの一族は誘導の源を守っているんだ。
導力の源。つまり、天使様をね。
あ、天使っていうのは揶揄で本当に天使はいないからね。
そして君たちが天使様を救う。誘導を封印しあるべき天界へと帰す。
そして我々、金と銀の翼をもつ一族は天使様を守る義務から解放されると。」
これを聞いてもあまり理解はできなかった。
「つまり、誘導の源を知っているから教えてくれると。
そういうことでいいですよね。」
「ああ、もちろんさ。教えるだけでなく案内までしてあげよう。」
族長は元気に答えた。
そして翌日から、私たちと族長、それに数人のお付きたちは
誘導の源へ向かうこととなった。
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