二十九話
「話を聞いてくれないか。私たちは誘導を求めているわけではない。
誘導を消し去ろうと考えているんだ。」
私は旅の目的を話せば攻撃をやめてくれると信じて、そう話を持ち出した。
「誘導を消し去る?」
族長は私から目を離さず、注意深く聞き返す。
「正確には誘導を封印する。そのために誘導の源を見つける必要がある。
そして、源の場所を知っているのが金と銀の翼をもつ一族という情報を得た。
だから訪ねてきたんだ。」
「なるほどねぇ。その話が本当だとして、どうやって誘導を封印するんだ?」
……そうだった。
手掛かりをつかんだからと興奮して、他の事を何も考えてなかった。
見つかればどうにかなるだろうと思っていたのか。
今思えば、城から出たかっただけなのかも知れない。
「黙ってちゃあわかんないね。やはりとっさの嘘か。」
「嘘なんかじゃないんだ。ただ……」
それ以上何も言えなかった。
私の考えはあっさりと失敗した。
「悪あがきはすんだか。他に何か言い残すことは?」
族長はため息をつき、そう聞いてくる。
「ちょっと、どうにかしてよ!」
と、フリーがアガネスに懇願しているが、アガネスは黙ったままだ。
「やれ!」
族長が命令する。衛兵たちの槍が一斉に襲い掛かる。
と同時にアガネスが反撃の動きを見せる。
しかし、この数はさばききれない。
やめてくれ!
私がそう思った瞬間、あたりが眩い光に包まれた。
突然起こった光によって衛兵が怯む。
アガネスも予想外のことで動きが止まっている。
徐々に光の強さは弱まってきたがまだ眩しい。
どうやら光は私の腰辺りから発せられているようだ。
光はきらきらと輝きを帯びており神秘的にさえ思える。
「こ、これはまさか……」
誰もがこの神秘的な空間にあっけにとられている中、
族長一人だけが、声を上げた。
そして、光は強さを失い、私の腰の一部分。
正確に言うと、腰につけている剣の鞘と柄の隙間から漏れ出る光だけとなった。
我を取り戻した衛兵たちは、あたふたと槍を構え直したが、
先ほどより距離が開いてしまった。
それはアガネスが構えを取るには十分だったのだが、その必要はなくなった。
「皆の者、構えを解け!」
族長がそういい、衛兵たちは戸惑いながらも槍を下げたのだ。
「どういうことですか。」と私は族長に問いかける。
「そうだな……皆の者、すまないが席を外してくれるか。
この者たちと話がある。」
そういい族長は、衛兵たちを外に出し、
テントの中は私、アガネス、フリー、族長だけになった。
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