二十八話
「それじゃあ。」
私がそう言おうとした瞬間、私たちは衛兵たちに取り囲まれ、
槍を突き付けられた。
フリーはキャ!と叫び、アガネスは表情こそ変えないものの殺気をあらわにした。
私は驚いて族長にどなった。
「な、なにをするんですか!」
「秘密を知ったからには、生かしては置けない。」
と族長は落ち着いた声で答えた。
「どういうことですか。」
族長は淡々と、そして少し悲しそうに話し始めた。
「どうやって知ったのかわからないが、
君のように同じような推理をした者共が過去にいてね。
その者共は、我が民たちをさらい、尋問したそうだ。」
「それは……」
「もちろん民たちは何も知らない。
しかし尋問され続け、最後には死んだそうだ。」
私は何も言えなくなった。
「もし、君たちが他の人にこのことを話せば、
また同じようなことが起こるかもしれない。」
族長は私をにらみつける。
「まったく、何が金と銀の翼をもつ一族だ。何が誘導の起源を知るものだ。
いい加減にしてほしいよ。」
「誘導の起源を知るもの?」
私はつぶやくように尋ねた。
「ああ、そうだ。さらっていった者共は我々をそう呼んでもいたそうだ。」
魔力滅道にたびたび誘導の起源という言葉が書かれていた。
まさか、魔力派の一派が。ここまでたどり着いていた?
「君たちにはここで死んでもらう。
残念だよ、王子を殺すことになるなんて。」
「私が王子と分かっていたのか!?」
私は驚いた。
「お前たち、この方が王子と分かっていて、この所業なのか。」
アガネスはそのことを知り、怒りに震えている。
「ああ、そうだ。一目みたら忘れない。その王族特有の金色の目。」
前にも言ったと思うが、私は王子としてあまり公の場に立ったことがない。
特に年を取ってからは。だから私が王子だとわかるものは城の者ぐらいだ。
「僕は一応、族長なんでね。そういう情報も集めているんだ。
王国がより大きな誘導を求めていることもね。
君たちもそのために駆り出されたのだろう。」
私を王子だと知っていて、国を相手にするかもしれないとわかっていながら、
彼は民を守るためその危険を冒すというのか。
「さて、無駄話は終わりにしようか。
なに、死体は砂漠に放置すれば、ばれることはあるまい。
もし発見されても、野垂れ死んだと思わせられるように偽装するしな。」
族長の言葉に迷いはなかった。
「くそ、本気か!」
私はそう叫ぶしかできなかった。
アガネスを使えば切り抜けられるかもしれないがフリーが傷つく可能性が高い。
それに、争いをなくすために旅をしているのに、争っていては元も子もない。
しかし、このまま何もしないわけにもいかない。
私は決心した。
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