二十七話
私はまた族長のテントを訪ねた。今度はフリーも一緒だ。
族長は親切に対応してくれた。
「それで、料理のほうは口に合ったかい?」
「はい、とてもおいしかったです。それで聞きたいことがあるのですが。」
私は話を続ける。
「先ほど、この部族を守護されている、翼のない天使様についての話を
聞きました。」
「ああ、あのおとぎ話か。それがどうかしたか?」
族長は不思議そうだ。
「はい、それとここでよく金色の剣の印をよく見かけました。
おそらくこの部族を表す印、ですよね。」
「よく見ているね。そう、うちの部族の紋章だね。」
「それでですね、ひらめいたんです。
天使様の話で、翼を落とし、武器と防具にしたとありました。
その翼は金と銀だったのではないかと。」
族長は黙って私を見ている。
「そして、金の翼を武器に、銀の翼を防具にしたのではないかと。
金の武器、つまりここの紋章である金の剣に。
そしてあなた方は金の翼の一族。こう考えたわけです。どうでしょう」
「なるほど。面白い推理だ。つまり我々が天使様の片翼、金の剣の一族であり。
そして、もう片翼、銀の盾の一族を知っているとそういうわけか。」
「はい、金と銀の翼をもつ一族は、一つではなく
別々に分かれたのではないかと。」
「面白い!実に面白いよ!……でも大外れだ。」
族長は笑顔でそう答えた。
「確かに、金の剣は我々の紋章だし大切なものだ。
しかし、武器をかたどった紋章は他にもたくさんある。
色は分からないが探せば金や銀もあるだろう。
つまり、珍しいものでもないし、そのようなおとぎ話とは全く無関係だよ。」
族長はきっぱりとそういい放った。
「そう…ですか……」
私は力なくそういうことしかできなかった。
やはり無駄足だったことに変わりなく、どっと落ち込んだ。
「さあ、夜がふけたきた。もう休んだらどうだい?」
族長はそう提案してきた。
しかし、私はなにか引っかかることがあった。
見落としているがある。そんな気がしてならず、その場で立ち尽くした。
なにか、なにかがへんだ。思い出すんだ……。
そうか!!!
「族長、あなたはやはりもう片翼の部族を知っています。」
「なんだって?」
族長は少し不機嫌そうだ。
「私は天使様はその翼を金の武器と銀の防具にしたと言いました。」
「それがどうかしたかい?」
「しかしあなたは、金の剣の一族と銀の盾の一族と言いました。
なぜ、防具のことを盾とおっしゃったのですか?」
私はそう族長を問い詰めた。
「たまたまだよ。防具だったら盾だってそう思っただけだよ。」
族長は軽く流すかのようにそう答えた。
「防具といえば普通は鎧とか兜とかそういうものを想像します。
盾であると知っていること。それが、何よりの証拠です。」
私はビシッと言い切った。
「知らないと言っているだろう。さあ、もう出て行ってくれ。」
それに対し、族長はかなり不機嫌そうだ。
しかし私はかたくなに動こうとはしなかった。
絶対何か隠している。そう信じて疑わなかった。
「まったく、何を言っても無駄そうだね。」
族長はそういい、手を上げた。
「分かったよ。」
私はとうとう族長が根負けして秘密を明かしてくれるのだと思った。
しかし、すぐにその考えが間違っていることを知る羽目になった。
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