二十五話

「ね、おいしいでしょ。」


まるで、自分が作ったかのようにフリーが嬉々として尋ねてくる。


ここの民族料理は今まで食べたことが無いものばかりだが、

どれもとてもおいしい。


「あー、私もまた食べようかなー。」


まだ食い足りないのかと思いつつ、私はフリーにこんなことを尋ねた。


「ところでフリー、お祈りなんて誰に教えてもらったんだ?」


「ん?ああ、さっき会った女の子がね、教えてくれたの。

私が食べようとしているところで、天使様にお祈りしないとだめだよって。」


「ふーん。その天使様ってのはどういうものなんだ?」


「天使様?ほらあれ。」


そういってフリーは入り口付近にかけてある絵を指さした。


「あの絵に描かれているのがここの天使様なんだって。」


その絵には穏やかな表情で手を組み、

頭の上に輪が輝いている女性の姿が描かれていた。


確かにぱっと見は天使に見える。


しかし一般的に天使と呼ばれるものと大きく違うところが一つあった。


翼が描かれていない。そんな私の不思議そうな顔で察したのか


「ねー、変だよね。ふつうは大きな白い翼が付いてるのに。

でもね、それには深ーい理由があるんだよ。」とフリーは言った。


「理由?」


私は反射的にそう問い返した。


「そう、それも女の子に教えてもらったんだけど……」


フリーは言い終わらないうちに、急に立ち上がったかと思うと

「ほら、あの子!おーい、そこの女の子ー。そう、あなた!こっちきてー。」

と、大声で呼びかけた。


すると一人の女の子がこっちへ顔を向けた。


水平に切りそろえられた黒色の髪、まんまるした黒い瞳、

少し黄色み掛かったはつらつとした肌、

そして満面の笑み。背は私の腰当たりだろうか。

そんな女の子が私たちのもとへ駆け寄ってきた。


「どうしたのお姉ちゃん?あ、また食べ物こぼしたりしてないよね。」


「も、もうそんな失敗しないよー。」


フリーが食べ物をこぼすのはよくある事で、

いつもは注意しても聞き流されるが、

こんな小さい子に言われたのは少し堪えたようだ。


「そ、そんなことより、さっきの天使様の話を聞かせてくれないかな?

この二人が聞きたいんだって。」


そうフリーは話を切り替えた。


女の子は私とアガネスをちらっと見たあと、

「うん、いいよー。」と女の子は快く引き受けてくれた。


女の子はフリーの横の席に座った。


私は女の子に挨拶をすると、元気よく返してくれた。


アガネスも同じように挨拶をしたのだが、

女の子は少ししどろもどろな返事を返していた。

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