二十二話

その一団は私たちが見つけてから数時間ほど進んだのち、歩みを止めた。


そこは砂漠にしては珍しく草木が多い場所だった。


野宿していた近くにこのような場所があったのかと私は驚いた。


彼らはそこでテントなどの設営を始めた。今回はここに腰を下ろすようだ。


デイビスに教えてもらった場所とずれていたな、と思いつつ

彼らに近づいて行った。


彼らは慣れた手つきで次々と設営の準備をしている。


その風景を見ているうち、私はあるものに目が留まった。


テントに光る金色の何か。


もう少しよく見るため近づいてみると、円の中に剣が描かれた印だった。


それが金色の糸でテントのところどころに刺繍されたいた。


周りを見渡してみると他のテントにも刺繍されていた。


金色の剣の印か。金と銀の翼との共通点は金という部分だけか。


もっとよく調べようと思ったのだが、

「おっと、危ないよ。旅の人かな?

まだ設営が済んでないから、もう少しだけ待っててくれ。」

と民族の人に言われてしまったので仕方がなく、待つことにした。


彼らはテキパキと作業をすすめ、大小さまざまなテント、その内装、馬小屋、

果ては端から端が見えないほどの超巨大なテントまでを

ものの1時間で全てを設営し終えた。


しかも誘導の力を使わず、人の力だけでだ。


私はその光景に驚嘆した。


フリーは「すごいすごい!」と騒いでいる。


アガネスだけはいつも通り冷静に辺りを警戒していた。


おっと、唖然としている場合ではない。情報を集めなければ。と我に返り、

私たちはゼルグラード族のテント群の中へと入っていった。


「まずは族長に話を聞こう。」


二人にそう言い私は族長の居場所を付近にいる人に尋ねた。


どうやら、真ん中の大き目なテントが族長の家だということが分かった。


私は礼をすると、族長のテントに向かって歩き出したのだが、

「あ、ちょっとまってよ。あたしおなか減ったー。」

と、どこからかいい匂いが漂ってくるのにつられ、

フリーがわがままを言いだした。


「3日も野宿して食事も満足に食べれなかったし、おなかペコペコだよー。

ねー、何かごちそうしてもらってから話に行かない?」


「いや、私は早く話したい。」


そう私はフリーの提案をきっぱりと断ったところ、

「むー、じゃああたしだけで食べてくる!二人で行ってくれば!」

と、フリーは拗ねて一人で匂いのするほうへ行ってしまった。


「どうしますか、主様。」


「まあ、放って置いても大丈夫じゃないか。

ここはゼルグラード族しかいなさそうだし。腕の立ちそうな人もいる。」


心配するアガネスに私はそう答えた。


先ほどいかにも戦闘兵という格好をした人が数人、

この集落を巡回しているのを見た。しかもかなりの手練れだろう。


「分かりました。主様の決定に従います。」


そうして、私とアガネスの二人で族長のテントへと向かった。

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