十九話
魔力滅道は黒の革でカバーされており、
表紙と背に魔力滅道と金色の文字が押されている。
それ以外に装飾はなく、布教用の書物とは違って地味な印象だ。
「それをどこで手に入れたのです?」
アガネスは珍しく興奮した様子で、私に尋ねてきた。
「ああ、城に絶対に進入禁止の父の秘蔵室があるだろ。あそこだ。」
「あの部屋ですか……。
しかし絶対進入禁止となってるだけあって、貴方でも容易には入れないはず。」
そう、王の秘蔵室は厳重に守られている。
窓はなく、唯一の出入り口の扉は厚く重厚で鍵もかけられている。
そして、その扉の前には2人の警備の兵が立っている。
確かにこの部屋に入るのは容易ではないだろう。
フフフと笑いつつ、私はアガネスにどうやったかを説明した。
「私の趣味が鋳造なのは知っているだろう。」
アガネスはうなずく。
「まず私は、父の部屋に入り、秘蔵室の鍵の型を取った。
さすがに鍵をそのままずっと持っているとばれてしまうからな。」
まあ、私は王子だし何ら理由をつければ入ることは簡単だ。
「そしてその型をもとに鍵を作った。」
「なるほど、しかし扉は開けられるとして、警備はどうやったのです。」
「アガネス、最近城に賊が入ったのを覚えているか。」
「はい、ありましたね。」
「あの時だ。警備の兵が賊の報を聞いて、
そちらに向かったのか居なかったんだ。」
「そのタイミングで入ったと。」
その通りだ。あの扉は重厚だし、鍵もかかっている。
そうそう入り込めるところではない。
「しかし、今思うと謎なんだよな。」
「何がですか?」
アガネスは私の疑問のつぶやきに対し、返事をした。
「いや、賊が出たからと言って、確かに侵入は難しいだろうが、
警備を残さないなんておかしくないか?」
「そうですね。確かに不用心ではあります。現に王子に入られていますし。」
そうなのだ。それに扉の鍵。
あの時私は複製した鍵を刺して回したが、鍵が外れたような音がしなかった。
音がしないものだったのかもしれないが、
それにしても開けた実感も感じなかった。
まさか、すでに開いていた……?
しかし中には誰もいなかったし万が一にもそんなことはないと思うが。
「王子、どうかしましたか。」
と考え込んでいる私にアガネスが声をかける。
「いや、何でもない。」
「それで入った後にその本を見つけたんですね。」
「ああ、そうだ。中には何やらわけのわからないものばかリだったな。
どこかの国の贈り物だろうか変な人形や何かの動物のはく製
誘導具らしきものもあった。ところどころ母のものもあったかな。」
そう私は思い返した。
「そして、奥の隠された棚の中にあったんだよ。魔力派に関する品々が。」
そう、王は魔力派の物をすべて処分したと見せかけて、
一部を自分で隠し持っていたのだ。
「まさか、そんなことが……」
アガネスは驚きを隠せない様子だ。
「そこからこの本を見つけ、こっそりと持ち帰り、読んでいたところ、
誘導封印の手掛かり、金と銀の翼をもつ一族のことが書かれていた。
というわけだ。」
私はアガネスに説明を終えた。
「もともと誘導兵器をどうにかしようと、
城に居ながらできる範囲でいろいろ調べていたんだ。
そして最後に残ったのが秘蔵室だった。」
怪しいとは思っていたが調べるチャンスがなかなかなかったので最後になったが、
最後の最後で手掛かりをつかめたというわけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます