十八話
アガネスの父も近衛兵だった。王を守る忠実な兵だった。
しかし、きっかけは何であれ、彼はいつの日からか魔力派になった。
そしてそれは大きな問題になった。
軍の中のそれも兵の見本みたいな彼が、
誘導を使って戦争をする軍を率いる彼が、魔力派になったのだ。
そのニュースは世間に大きな影響を与え、
魔力派の考えに賛同する人が大いに増えた。
軍内部は混乱に陥り正常に機能しなくなった。
この時に攻め込まれなかったのは幸いだった。
攻められていれば間違いなく負けていただろう。
城内は誘導派と魔力派とで論争が絶えない場になった。
幾日も同じような争いが続いていた。
王もしばらくは事態の解決を図ろうと、いろいろと模索して実行していた。
しかし、解決することはできなかった。
王は焦っていたのかもしれない、早く鎮静化しないと、
攻め込まれでもしたらこの国は終わってしまうと、
そう考えていたに違いない。
そう思いたい。
出なければあのような強行を許すことができない。
王は魔力派に属する者たちを処刑することにしたのだ。
この王の決定を聞き、多くの人がすぐさま魔力派を離脱し、
世間の多くの人が魔力派の考えを口にしなくなった。
しかし、それでも魔力派に残る者たちはいた。
アガネスの父もその一人だった。
彼らは彼らの意志を貫き通し、そして処刑された。
魔力派にかかわる物品は処分された。
私やアガネスが物心つくかつかないかくらいの時に起きた出来事だ。
魔力派はこの世から消えた。
しかし、ここに残っていた。
魔力派によって書かれたこの本”魔力滅道”が。
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