十四話

細い道を抜けると今度は階段を数百段上ることになった。


非常用の階段なのか二人が並べる程度の幅しかない。


機械人形は階段を上がることはできない

(正確には上がれるが時間がかかりすぎる)ため、

私たちだけで上ることになった。


目的の階にまた機械人形を用意しておくとのことだったので、

その階まで上らなければならない。


途中他の階を通り過ぎたがほとんど真っ暗だった。


小さな赤い光がチカチカついたり、

青白い目のような光が不気味にともっていたり、

なにやらいろいろなものが置かれているようだったが

暗くてよくは分からなかった。


近づいて調べたかったが、

今は一刻も早くリリウムを取り戻さないといけなかったので先を急いだ。


そして目的の階についた。デイビスの言っていた通り機械人形が待っていた。


私たちは先ほどと同様にその機械人形についていく。


この階は私たちが入った階と同じくらい明るい。


壁はやはり同じようなチューブやパイプ、スイッチで埋め尽くされている。


床や天井も同様入ってきた階と同じだ。


そしてしばらく歩くと、大きな部屋にでた。


いや、部屋というには大きすぎる空間だった。


端から端まで200mほどあるんじゃないだろうか。


そんな空間の両壁際に、途中の階で見たシルエットと同じような

金属でできたカラクリや、今案内して来てもらった機械人形、

わけのわからない大きな金属の塊、

大小さまざまなガラクタが所狭しと置かれていた。


その上をフヨフヨといくつかの金属が飛んでいる。


あれも機械人形の一種なのだろうか。


せっせとガラクタを右から左へ左から右へ運んでいる。


そして扉から入って正面には無数の箱が天井まで届きそうなレベルで並んでいる。


箱の中には絵が描かれており、それはこの施設内の絵の様だった。


いや、あの絵、動いていないか。


どういう仕組みかは分からないがこの施設内の今を描いているようだった。


現にこの部屋を描いている絵には

私たちが寸分たがわずまったく同じ状態で描かれていた。


なるほど、これで今までの私たちを見ていたというわけか。


その無数の箱の床付近。その中心にある人ぐらいの大きさの

卵のような白くて楕円形の物体がガチャガチャと音を立てていた。


私たちが部屋の中心辺りまで来ると、ふいにその音が止まり、

「よく来たのう」とクリアな声がし、物体が180度クルッと回転した。


そこには男性の老人が座っていた。


その物体は椅子の様だが何やらいろんなボタンが付いていた。


「貴方がデイビスさんですか」


私はその老人に尋ねる。


白いもやのような白髪頭、あまり生気の感じられないしわだらけの白い顔、

しかし鋭い眼光を残す緑色の目。

体はひょろっとしていて座ってはいるが身長は低そうだ。

上から下までの体がほとんど隠れるほどの大きな白衣を着ている。


その白衣はすすやら焦げやら液体やらで半分ほどは黒く汚れている。


「そうじゃ。すみませんのうわざわざ。

なにせこの体でして、出迎えに行けないのです。」


どうやらこの人がデイビスの様だ。


確かにこの老体ではあの道を通るのは大変だろう。


「それで、何の用じゃったか。

おお、そうそう、取られたものを取り戻しに来たのでしたな。」


「そうなの!リリウムを返して!」


そう切羽詰まったような声で叫ぶフリー。


「うむ、もうそろそろだと思うのじゃが。」


そうデイビスが言って間もなく後ろから、つまりこの部屋の入り口から声がした。


「なぁ!?お前らこんなとこまで来やがったのかよ。」


それは、間違いなくヘルの声だった。

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