十三話
今度は細い道を通ることになった。
壁のみならず、天井や床にまで様々な太さの黒いチューブが所狭しと這っている。
そのせいか明かりは付いておらず、暗い道が十数mほど続いている。
抜けた先の道は明るいので、通る分には問題ない明るさはあるが、
またしても罠っぽい。
罠だらけだな、この建物と思う。
例のごとく、フリーに調べるよう頼んだ。
フリーはしばらくたってからこう答えた。
「壁の裏には何も仕掛けっぽいものはないわ。ただの壁みたい。安全そう」
そうなのか。
てっきり壁が迫ってきて押しつぶすような罠だと思ったのだが、違うようだ。
「なんじゃ、また進まんのかい?機械人形も待っておるのに。」
しびれを切らしたデイビスがまた、どこからか話しかけてくる。
「あの機械人形は作るのに苦労したんじゃ。そうそう壊してしまわんて。
あれの近くにおれば安全、ということにならんか?」とデイビスは言っている。
確かに、機械人形はこの細い道の半ばあたりで、私たちを待っている。
しかし人形は生命体ではないし、
私たちもろとも罠にかけてしまっても何らおかしくはない。
かといって、進む以外の選択肢が残されていない。
またほかの道を案内してもらってもよいのだが、
同じような罠に行きつくだけだろう。
フリーが安全そうというのだからそれにかけよう。
なぜだか嫌な予感がするが仕方がない。
私はそう決心し、注意しつつ歩みを進めた。
そう、注意していたはずだった。
一歩二歩と私は慎重に足を進めていく
「三歩…よん!?」
ドザッ!と私は勢いよく前に倒れこんだ。
「大丈夫ですか王子!?」
アガネスが急いでそばにより助け起こそうとする。
慌てていたのか王子と言ってしまっているが聞かれなかったことを祈ろう。
「な、何かが絡まって…」
私はそういいつつ体をよく見ると、
黒いチューブが足や腕、胴まで絡まって動けなくなっていた。
一体全体、転んだだけでどうしてこんなに絡まるのだと思いつつ、
ほどこうともがいた。
が、逆効果でどんどん体に絡まっている。
「ちょ、なんだこれ!新手の罠か!」
体にチューブがまとわりつき、
動けなくして最後には窒息させるという趣味の悪い罠だろうこれは!
くそ、こうも簡単にはまってしまうとは。
「落ち着いてください。取り合えず、じっとしてください。」
半分パニックになっている私をアガネスはそう制し、
そして慣れた手つきで私からチューブを取りはじめた。
あれ、アガネスには全く絡まっていない。
「しかし、数歩進んだだけでここまで絡まれますかねえ。」
半分あきれた口調ではなしながらアガネスは絡まったチューブをほどいていった。
「す、すまない…」
数歩進んだだけで、私の体には普通ではありえないほどに
チューブが絡まっていた。
「なぜこうなってしまうんだ。」
「そういえば昔、縄梯子を上ったとき、足を滑らせ落ちた拍子に
縄梯子にわざとかと思うほどの絡まり方をしていましたね。」
「よしてくれ、昔の話だろ。しかし今でもこうなるとは。」
そう、私はなぜか細長いものによく絡まる。理由はよくわからない。
糸なり紐なり、網さえも、
近くを通り過ぎようとしただけなのになぜか体に絡まっていたりするのである。
私はどういう天運なんだろうとか考えているうちに、
アガネスは淡々と解いていった。
その先は、恥ずかしながら私はアガネスにおぶってもらいながら、
この細い道を抜けた。
まあ、十中八九また絡まるだろうから仕方がなかった。
こんなことで私のいやな予感は当たっていたわけだった。
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