十二話
私たちは無事に開いた扉の前までたどり着いた。
すると中から1mほどの人形が出てきた。
その人形はひとりでに動いているようだ。
体は金属でできているのか、動きが若干ぎこちない。
関節部分から内部の針金やらゴムのチューブやらが見え隠れしている。
頭のような球体はついているが、顔は書かれていない。
「その機械人形について行ってくだされ。案内させましょう。」
急に頭上からデイビスの声がした。
驚いて上を見ると、扉の上に2つ金属の箱がついている。
その右側のところから聞こえている。
どうやらここから声をだす仕組みの様だ。
左のほうはレンズの様なものが付いているようで、
左右に首を振りながら私たちを観察しているように見えた。
そうこうしているうちに人形は建物のほうへ向きを変え、中に入っていった。
私たちは恐る恐るそのあとを追い、中に入った。
建物内は外観と同じく見たこともない景色が広がっていた。
壁には様々な色のチューブが金属の太いパイプを縫うように這っており、
隙間を埋めるようにスイッチやボタンが配置されている。
天井では少し黄色掛かったライトが通路を明るく照らし、
金属の翼がぐるぐると回り、空調しているようだ。
床は金属で、歩くたびにカツンカツンと靴の音がなる。
どれを取ってみても私の知っている誘導具の技術とはかけ離れている。
この前を歩く人形もそうだ。
誘導人形は糸や綿でできており、骨組みに茎や枝を使っている。
できることも単調な作業を繰り返す程度だ。
だがこの機械人形とやらは、金属でできており
しかも自動で動き道案内もできる。
いったいどんな技術なんだ。
興味津々で観察していると、人形が止まった。
「さあ、ここに入ってくだされ。」
デイビスの声がどこからか聞こえる。
と同時に左の壁だと思っていた場所がスライドして開いた。
中は2m四方の小さな部屋だった。
私はなんだか嫌な予感がした。
他の二人も同様の様だ。
どう見ても罠にしか見えないその部屋に、私たちが入るのをためらっていると。
「どうかしましたか?」と、デイビスが催促を入れてくる。
私は小声でフリーに
「どうなっているのか調べてくれ」と、頼んだ。
フリーの返答は早かった。
「もう調べてたわ。
どうやらこの部屋、上からロープで吊り下げられて宙に浮いているの。
上の方には滑車があって、この部屋ごと巻き上げるのかしら。」
「そしてそのまま、落下させるという仕組みか。
しかし罠としては効果は薄そうだな。」と私は分析する。
入った部屋を落とすより、
部屋そのものを頭上に落としたほうがはるかに効果的な気がする。
だからと言って、罠にわざわざ掛かる道理もないので、
私はデイビスに他の道がないか訪ねた。
「あー、デイビス。どこにいるかは分からないが、聞こえているんだろう。
別の道はないのか?」
しばらくの沈黙の後、
「なに!乗ってくれんのかね。それは残念だのう・・・。
別の道か。少々きつい道じゃがあるぞい。案内させよう。」
こんな見え透いた罠に誰も掛からないと思うが、
デイビスは本気で残念そうな声をしていた。
そして、機械人形がまたぎこちない動きで動き始めたので、
私たちは後をついて行った。
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