十話

みんなで食事を取った後、私は謎の建造物の観察を始めた。


どうやら周りを囲んでいるフェンスだが途切れている部分があり、

6mほどフェンスがない場所がある。


その場所からみて正面の建物に入り口らしき扉がある。


他の建物には入り口は見当たらなかったためそこが出入り口なのだろう。


しかし、罠である可能性が高すぎる。


どうしたものか、とりあえずもっと近づいて調べてみる必要がありそうだ。


「フリー、調子はどうだ。」


「うん、もう大丈夫。ばっちしだよ!」


顔色もよくなったフリーは元気に答える。


「すまないが、まだフリーの力が必要なんだ。頑張ってくれ。」


そう私は伝える。


フリーは両手でガッツポーズをして答える。


そして3人で注意しつつその入り口に近づいて行った。


「気をつけてね。もしかしたら誘導じゃない力かも。」


そう、フリーは忠告してきた。


私は気になってとっさに聞き返した。


「いったいどういう意味だ。」


「どうやら、あいつら誘導じゃない道具をつかっているっぽいの。

逃げられたときの黒い煙は覚えてる?」


「ああ、何も見えなくなったな。」


「あたしね。あの時、煙を消そうといろいろしていたの。」


そうか、フリーであれば造作もないことだ。


「でも、できなかったの。どうやら誘導じゃない何か別の力っぽいのよね。

それに、誘導で作った煙なら咳き込まないのに、

あの煙は本物の煙そっくりだったわ。」


本物の煙を作り出す力だと?それもあんな一瞬で。


そんなの聞いたこともないぞ。


そうこうしているうちに、フェンスが途切れている部分に来た。


近くに来てみると何やらフェンスがビリビリと音を立てているのが聞こえる。


「なんなんだこの音は。」


「どうやら、電気が流れているようですね。それも強力な。

触れないように、死にます。」


私の質問にアガネスが淡々と答える。


電気か。あのたまにバチッとくる痛いやつか。


たびたび火花が散っていると思っていたが羽虫がぶつかって、

焼け散っているようだ。


「フリー、何か探知できないか。」


フリーに捜索を要求する。


「うーん、今のところ何もないのよねー。」


そういいつつ、捜索を続けるフリー。


私は恐る恐るフェンスが途切れている部分に近づき、


おそらく敷地内であるフェンスの向こう側へスーと手を入れてみた。


向こうの扉の上についた四角い箱が少し動いた気がしたが、

それ以外なんの変化もなかった。


「特に何もないようですな。」


アガネスは私の行いを不安そうに見ていたが、

何もなかったことでいつもの冷静な顔つきに戻っていた。


このまま進んでも大丈夫そうだな。


そう思っていた矢先だった。

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