八話

宿に着いてしばらくたち、日が暮れたころにフリーは我を取り戻した。


「ごめんね、二人とも。迷惑かけちゃって。」


「まったくだ。

アガネスはともかく、お前は足手まといにしかなってないぞフリー。」


「う…ご、ごめんなさい…」


フリーはいつになく落ち込んでいる。


「まあ、特に大けがとかはしていないし、よかったとしよう。」


「ほんとに?許してくれる?ありがとう!」


立ち直りが早いな。落ち込んだのは演技だったのか?


「それで、どうするのです。」


アガネスが尋ねてくる。


「首飾りを取り戻しにいく。あれがないとフリーが困るしな。」


「困るで収まるものじゃないよ!ほんっと、超最悪中の超最悪だわ!」


フリーは声を荒げる。


そんなフリーの言葉は無視し、私は尋ねる。


「フリー、位置は分かるんだろうな。」


「もっちろん。任せといて。」


自信満々に胸をたたきそういうフリー。




前に説明したと思うが、この世界すべてのものに誘導が宿っている。


そして人間の体内に宿っている誘導の量には個人差がある。


誘導を多く宿す人ほど体色が黒から白に近い色に変化する特徴があり、

特に男性は目、女性は髪が顕著に変化することが分かっている。


例えば私の場合、栗色の髪は珍しくもなく一般的。

金色の目は結構特別だな。王家の血筋ってやつだ。


アガネスの場合、黒髪で深緑の目。

黒に近く、あまり誘導を有していないことになる。

誘導の有無が強さに直結しているわけではないってことだな。


誘導を多く有していると、誘導武器や誘導具を扱いやすくなり、

訓練すれば、器具無しでものを浮かせたり、

火を生み出したりと自由に力を発揮させることもできたりする。


で、フリーなのだが、白い髪に青い目、それに加え白い肌。


察しがいい人は気づくだろう。


そう、とてつもない誘導を宿している。


一般的な誘導の身体含有率は10~15%。多くても20%だ。


しかし、フリーは50%以上含有しているとされている。




そして、そんなフリーだからこそできる芸当が、広範囲にわたる誘導探知だ。


誘導を含むものなら何でも。無機物から動物、人の位置まで正確にわかる。


城下町を出るときもこのフリーの能力で人のいない道を選び、

見つからずに脱出した。


で、今回はそれを使い、奪われた誘導体の首飾りを探すというわけだ。


「リリウムだけだなく、盗賊一味の位置もはっきりよ!」


”リリウム”ってのは首飾りの誘導体の事だが。


ん?盗賊の位置?


そういえば前に

特定の人物を誘導含有率で判別する技術を身に付けた、とか言っていたが、

探知との組み合わせで誰がどこに居るのかすら分かってしまうのか。おそろしいな。


「じゃあ、案内を頼む。」


「うん、ついてきて。早く取り返さないとね。」


そうして私たちは駆け足で用意を済ませ宿を出た。

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