六話

アガネスが前に出る。


「お二人は下がっておいてください。私が相手をします。」


そういい、盗賊二人を相手に戦闘を始めた。


ガキン カキン

刃と刃が交り、鉄同士がぶつかり合う音が響く。


アガネスは訓練をかなり積んでおり、こんな盗賊風情に負けるはずはないのだが、

この盗賊もなかなかやるようで、一進一退の攻防が続く。


「二人掛かりで何やってんだ、ちゃっちゃとかたずけろよ。」


ヘルが激を飛ばす。


「け、けどお頭、この男かなりの強さでして」と小柄な男が弱気の声を出す。


「ちっ、もういい俺がやる。」


そういうと、ヘルは短刀を抜き両手に装備する。


「なるほど、二刀流か。」


「ただの二刀流だと思っていたら痛い目みるぜ。」


「わざわざ忠告するとは、よほど自信があるようだな。」


「ごたごたうるせえ!」


アガネスとヘルの掛け合いはすぐさま戦闘へと変化した。


カカカカカガキン

あたりに絶え間なく火花が散る。


なるほど、言うだけあってかなり強い。


しかも型があるように見えて一部自分の得意な動きに変えている。


隙がない。それに


「どうやらその短刀、誘導武器のようだな。」


アガネスが戦いながらヘルに言い放つ。


「だったら何だってんだ、余裕ぶっているのか。」




”誘導武器”誘導が含まれた鉱石を使い、合金を作り、

その合金を使い作り上げられる武器の事だ。


見た目は普通の武器と変わらないが、

誘導の力が装備した者の身体的能力を引き延ばす力がある。


それによりヘルは常人ではありえない、

高速での移動、腕振り、一時的な空中での浮遊。


そのような空中殺法を繰り出している。


しかし、それでも…




ガキン!

ひと際大きな音が鳴ったかと思うと、ヘルが吹き飛ばされた。


ヘルはふわりと空中で体制を整え、着地した。


「な、なんなんだお前。その悪魔のような強さ。仕方ない、お前らも手伝え。」


アガネスの強さにヘルは少し焦った様子で、そう二人の男に援護するよう言った。


「勝てるんですかねえ、お頭ー。」


「どうにかしろ、3人で掛かれば隙ぐらい生まれるはずだ。」


そして3人でアガネスに襲い掛かってきた。


ガキン、カキン、カカカカカキン


アガネスはこれでも奮戦している。


が、さすがにきつそうだ。


疲れてきたのか、動きが鈍っている。


「アガネス、手を貸そうか。」


そうアガネスに問う。


一応私も得意ではないが戦える。剣も携えているしな。


「いえ、何とかして見せます。」


アガネスはまだ返事をするくらいの余裕はあるようだ。


キン・・・ハアハア・・・

どうやら小休止といったところか、

3対1の戦闘を続けていたが、いったんどちらも攻撃の手を止めた。


「ちっ、埒があかねえ。おいお前達、後ろの女を狙え。俺はこの悪魔とやりあう。」


「わ、わかりましたお頭。」


どうやら、勝てないと分かったのか、フリーを直接狙うようだ。


私にぎりぎり聞こえたくらいの小声だったので、

私より後ろにいるフリーには聞こえていないだろう。


私がフリーを守るよう動くか。そう思い、少し下がる。


「確かに、そうですね。このままでは埒があかない。」


アガネスがヘルに答えるかのように話し始める。


「私もここまで楽しめたのは久しぶりでしたので、

ですがそろそろ本気を出しましょうか。」


ヘルはかなり疲れていたのか、そのアガネスの言葉に驚きの様子を隠せていない。


「今までのが遊びだったっていうのか。」


「ええ、そうです。では今度はこちらから攻めさせていただきましょう。」


そういうとアガネスは目を閉じ精神統一を始める。


そこまで経たないうちに、アガネスの槍に青い粒子が纏わり始める。


「その槍も、誘導武器か。」


そう。ヘルの言う通り、アガネスの槍も誘導武器だ。


しかし、ただの誘導武器ではない。

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