二章 誘導体盗賊団
五話
「お、来たね。」
すでに外に出ていたヘルが近寄ってきた。
「こっちだよ、付いてきな。」
そういってヘルは歩き出す。
酒場を出ると大通りに出る。
この街の入り口からまっすぐ伸びる、豪勢な通りだ。
街の中央の広場まで続いており、その西側にはカジノ、
東側から奥にかけては遊園地が建っている。
その隙間を埋めるように宿屋や酒場が建ち並ぶ。
それがこの歓楽街、デンデンだ。
こんな一見しただけでは迷ってしまいそうな複雑な街を
勝手知ったるかのようにすいすい進んでいくヘルを
私たちは追って行った。
そして裏路地に入り、しばらく進むと、少し開けた場所に出た。
まあ、開けたといってもそこは裏路地で、昼間だが薄暗い。
「さて、話を再開しようか。」
そうヘルが言ったので、私は先ほどヘルが言っていたことについて尋ねる。
「誘導の封印について、知っているといっていたな。」
「ああ、確かに知っている…だが、ただってわけにもいかないね。」
「何が欲しいんだ。金か?あいにくあまり持ち合わせがないが…」
「金…も魅力的だが、俺はその女の子のつけてる誘導体がほしいね。」
と、ヘルはフリーの首元にかけている8㎝程の細長い青く光る誘導石を指さした。
「その首飾りか…」と私はフリーを横目に見る。
「だ、だめよこれは渡せない!」
そういってフリーはその誘導石を握った。
「他じゃダメなのか?」
私はヘルに提案した。
「そうだね、エイクトンビムでも持ってないかな?」
「エイクトンビムだ!?」
私はヘルの突拍子もない言葉に声を荒げてしまった。
”エイクトンビム”
それは、家の1,2件を簡単に吹っ飛ばせるほどの威力を持った誘導兵器だ。
確かに売れば結構な額にはなるが、
「軍関係者っぽいし、もってないかい?」とヘルは言う。
「何に使う気だ。持っていないし、持っていても渡せない。」
「そうかい残念だね。」
私とヘルがそういうやり取りをしているとアガネスが耳元でささやいてきた。
「このヘルとか、どこかで見たような気がします。
行動や言動も怪しいですし、情報を持っているかも怪しいです。
なかったことにして帰りませんか?」
アガネスの言う通り、私も不信に思ってきたところだ。
またと無いチャンスだったかもしれないが、仕方がない。
「悪いが、あんたの要求するものは度が外れている。
今回はなかったことにしてもらおうか。」
この私の言葉に対しヘルは、
「そうかいそうかい…じゃあ」
そういうと片腕を振り上げた。
すると突然、2人の盗賊風の男が道を塞いだ。
「ただで返すと思ったか?」と、がたいのいい大男が言う。
「まんまとはまりやがって。」
隣にいたすばしっこそうな小柄な男がニヤニヤしながら言う。
二人ともマスクとフードをかぶり、顔はよくわからない。
「なんだ、やろうっていうのか。」
アガネスはそう低めの声で威嚇するように言い、自分の身長ほどもある槍を構える。
そんなアガネスを見ても余裕の表情でヘルはこういった。
「さあ、その彼女が持っているものをおいていってもらおうか。
その誘導体は無限の可能性があるんだろう?」
私はまたもやヘルの言葉に驚いた。
「!!! なぜ、この誘導体の事を知っている!」
「ふん、答える義理はねえ!さっさとよこしな!」
ヘルがそう言うと二人の男が腰に差していた短剣を抜き、襲い掛かってきた。
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