三話

娯楽街”デンデン” 料亭酒場”ホランジュ”にて。


ハァ…

「で、なんでお前たちはついてきたんだ?」


ため息交じりで私はそう尋ねる。


今、私たちは3人でテーブル席についている。


よくある正方形の木製のテーブルに木の椅子が4つ並んだものだ。


「えー、だって心配だったしー。って、ここの料理おいしい!」


そういって、私の斜め前に座って料理をほおばりながら話している女性は、

”フリー”だ。


透き通るような青い瞳、肩まで伸びる白い髪に白い肌、

そして料理によって膨らんだ頬

背は標準的な私と比べ少し低く、

よくある日を避けるよう設計された涼しげな服を着ている。


私も同様の服を着ている。もちろん男物だ。


「そうですね。王子はなにかと目を離せませんから。」


私の前に座り腕を組みつつそう話す男性は王国の近衛兵の”アガネス”だ。


1㎝程に切りそろえられた黒い髪、深い緑色の目、日に焼けた黒掛かった肌

背は高く180㎝程、こんな熱い砂漠の街でも甲冑を着ている。

兜はしていない。どこかに置いてきたのだろうか。

背中には身長程もある槍を背負っている。


彼はいろいろあったのだが、いまは側近として私の身を守ることになっている。


この二人は私の幼馴染であり、腐れ縁でもある。年もそう離れていない。


私の横の席は皆の荷物が乗せられている。


「そーそー、王子って何をしでかすかわからないもん」


フリーはいまだ料理を食べつつ話す。


「まったく…、お前のせいで大変だったんだからな!」


そう、それは数時間ほど前。城下町を出る前にさかのぼる。




私は、自室に置手紙を残し、準備した荷物を持って、城を出発した。


が、城をでで、そこまでたたないうちに

「王子ー、王子ーーーーー」

と後ろから大声で呼ばれたのだ。フリーから。


まだ、そこまで時間もたってないのに、すぐに追いかけてきたのだ。


なんてことだ、あれだけ騒がれたら、ひそかに城を出ることもできない。


騒ぎになり、城を出たことが分かれば、父が捜索隊を派遣してくるだろう。


城下町の門を抜けることも難しくなる。


私はすぐにフリーをひっとらえ、小声で「追い騒ぐな、やめろ!」といったのだが

「王子ー城を出るって本当なんですかー!」と一向に落ち着かない様だったので、

取り合えず人目が付かない、秘密の場所まで引っ張っていくことにした。


「ここなら、多少騒いでも大丈夫だろう。」


そういって私はフリーをつかんでいる手を離した。


裏路地にある、周りが建物の高い壁で囲まれ、日もあまり差さない場所。


「あ、ここって秘密基地!」


そう、子供のころ城を抜け出し遊んだ、人に見つからない場所だ。


今見ると基地って程でもないと思うが当時は本気でワクワクしたものだ。


「あ、それより王子。城を出るって本当ですか!?」


「ああ、そうだ。」


フリーは興奮気味に(いつもこんな調子だが)

私に疑問を投げかけ、私はそれに淡々と答えた。


「なんでですか!?」


「それはだな・・・」


私が理由を話そうと思ったとき

「王子、ここでしたか」

ぬっと横の壁の隙間からアガネスが出てきた。


「おお!?ア、アガネスか。驚いだぞ」


私は驚いて変な声を出してしまった。フリーは変な声ーとクスクス笑っている。


「それは失礼しました。しかし、何をしてらっしゃるのです。

王子はこの後の予定もあるのですぞ」


そんな中アガネスは表情一つ変えず、そう私に告げた。


「知ったことか、私はこの城を出るのだ」


「な…それはなぜに…」


この答えにはさすがのアガネスも少し動揺したようだった。


「それはだな…」


そうまた理由を話そうと思ったが、遠くから「王子を探せー」という声が聞こえた。


「ん、そういえばアガネス。私を探していたのか?」


「ええ、手紙を見た王が、捜索を命令しまして。」


「なんてことだ…」


私の予想よりはるかに早すぎる。


それもこれもフリーのせいだ。


「とにかく私は戻る気はないからな!」


「お考え直す気はないのですか。」


「アガネスー、何を言っても無駄だと思うよ?王子の頑固さは知ってるでしょ。」


フリーがそう割り込んでくる。


「しかしですね…。ならば、私めも連れて行ってください。

この状況でも城下を抜けられる通路を知ってます。」


「アガネス、お前…」


「あー、ずるーい、あたしもついていく。それにあたしの能力が役に立つかもよ?」


「フリーまで、お前達なあ。」


私は頭を抱え首を振った。私と同じくこいつらも結構頑固だからなあ。


「ああ!仕方がないさっさと準備してこい。そんなに時間はないぞ。」


「は、ただいま。」


「りょうかいー。」


そうして二人を旅の友に連れて、今にいたる。

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