一章 退化への道

一話

「は!?」


私は急に目覚めた。


そして、またこの夢か。と思った。


あの日、父に戦場に連れていかれた日から、たびたび夢に見る。


最近は特に多い。


「しかし、これももうすぐ終わる。」


そう、私は誘導を…


バン!

「ちょっとー、いつまで寝てるの!って、顔色悪いね。いつもの悪夢?」


勢いよく扉を開き、誰かが入って来た。


この声は…


侍女であり幼馴染でもある"フリー"か。


私は頭を抱えつつ、寝ぼけた声で答える。


「はぁ…、いつも言っているがノックぐらいしろよ。」


「べつにいいじゃんー。貴方と私の仲でしょ?それよりもう起きてよ。

日が昇ってから2刻程過ぎてるんだから。

そ・れ・に、ベッドで寝なさい。また徹夜してたでしょー。

そんなことしてるから、悪夢なんて見るのよ。」


「関係ないだろ…」


フリーはいつも無駄にテンションが高い。朝からこいつの相手はつかれる。


だんだんと頭がはっきりしてきたので状況を把握する。


どうやら、私は机で寝てしまっていたようだ。


この本”魔力滅道”を読んでいる間に・・・


「朝食もできてるから、早く来てくださいね。」

バタン!


そういって、フリーはまたも勢いよく扉を閉めて出ていった。


「ふう…」


ため息を漏らしながらゆっくりと椅子から立ち上がる。


「いつつ」


机で寝てたせいか、体の節が痛い。


壁にかけてある鏡をみてみる。顔が映る。


寝癖がついている栗色の短髪、金色の目、健康そうな少し日に焼けた色白の肌

王族だからと言ってそんなに格好良くなく、かといって不細工でもない平凡な

若い青年の、この国の王子こと私の顔がそこにあった。


寝起きだからか少し目つきが悪いが、顔色は問題ない。


本を枕にして寝ていたためか顔の頬に本の跡が残ってはいるが。


あたりを見渡す。


ここは私の部屋だ。


王子の部屋だからと言ってバカでかい広さや豪華な装飾などはない。


ベッドと机、本棚、あと趣味の鋳造場があるくらいの至って普通の部屋だ。


壁は白い石を積み上げて、扉は木でできている。窓は一つしかなく少し薄暗い。


明かりをつければ結構な明るさになるが今は朝だしな。


特に変わりはないな。一年ほど前は、ペットのケージもあったのだが。


「と、そろそろ出るか。朝食もできていると言っていたし。」


私は身支度を整え、食堂へ向かった。

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