現実.11

交番から出る。荷物は何も増えず再び、荷台を引きながらまた色々考える。


なかなか生きてくのは簡単ではない。俺一人でも意外と難しいうえに、志織も居るからだ。

だが志織が居なかったら俺はとっくに死んでいた。


俺一人だと目的は無い。だから俺の目的は志織の安全で暮らせる場所探し。

どこか人間が安全に暮らしてる場所を見つけるのが最終目標。


凄い数のゾンビが集まってる場所にきっと人間が居るはずだ。もしくは人里離れた田舎。


やはり刑務所なのだろうか。

高い壁があり、時給自足出来る土地もある。

だが、ゾンビの身体の俺を受け入れるのは相当厳しいだろう。それに俺にはゾンビが必要だ。


小さな島とかも、考えたのだが、ゾンビは水の中も平気だ。いつかは辿り着くだろう。


地下施設とか日本にあるのだろうか。

地下鉄や駅の地下はどこも水没していた。


「ここら辺りはあまりゾンビが居ないみたいね」

志織が声をかける。


「一回リセットする?」

リセット。ゾンビを一掃する事。


「十体残そう。どれ残す?」

俺は言った。

「カラー君達は残して…あとはアレとアレ」

志織は若い男が着る服を着ているゾンビを指差す。


俺はゾンビを置き去りにする為、少し走り荷台を置き、急いで雨ガッパを着込みパイプを掴み、ゾンビに近付き次々と突き刺していく。


あまり強くやると俺の肩が外れたり、手の皮が剥けたりする。

逃げようとするゾンビの後頭部を刺す。

そこが一番の急所。頭は硬い。身体の真正面もアバラ骨で硬い。


丁寧に確実に刺していく。

捕まるのに気をつけるのではなく、血が付かないように気をつける。

自分を見る。返り血が付着している。

雨ガッパを脱ぎパイプと共に藪に投げ捨てる。


手や肩、関節を確認する。大丈夫だった。


これで当分静かになるだろう。


全部殺すと人間に出逢った時に困る。

良い人間ならいいが、たいがいは荷物を奪おうとする。


「志織も食事にするか?」

ゾンビは喰べ尽くすまでそこを動かない。

ちょっと殺し過ぎたか。こういう時に限って人間に出逢ってしまう。


「私見ちゃったから食欲ないなぁ」

「だからいつも見るなって言ってるでしょ」

「暇だからつい見ちゃうのよねぇ」

と言う志織の声に、缶詰を開ける音が聞こえた。

強くなったのはいい事だ。志織もなんだかんだ言いながら食べる。

「野菜もちゃんと食べろよ」

俺は言った。


そろそろ俺の足に炎症が出来る頃だ。

ずっと歩き続ける事が出来るのだが、足の筋肉が炎症を起こす。時間が経てば治るのだが、時間が必要。

水の補給と、着替えの服も必要。


「スーパーかコンビニがあったら休もう」

俺は声をかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る