現実.9

警察署の入り口からズラして荷台を置く。

ゾンビは入る時、無理やり入る。ドアを開けたりしない。

押し壊して入る。数十体が押し続ければ壊れる。

車も数体が押せば動かせる。

ただし身体は人間と同じなので、圧迫されたアバラや腕が折れたりする。怪我したゾンビは弱くなり、やがて丈夫なゾンビに喰われていく。


警察署の中は荒れていた。どの家も店舗もそうだ。血の乾きや汚れ具合から半年は誰も踏み入れてないようだった。

足跡やクモの巣。ホコリの積もり方で分かるようになった。


ロッカーの前を歩く。中にゾンビが入れば俺から逃げようと、もしくは志織を食べようとし動くので分かる。隠れて待ち伏せする程の知恵はないが、閉じ込められたゾンビがたまにいる。


カウンターからゾンビが入ろうとするから俺は入り口に戻る。

たくさんのゾンビが居るのもまた問題がある。八メートル離れてるゾンビが近寄り手前のゾンビを押していく。八メートルに入ったゾンビは逃げようとするが、後から来るゾンビが多いと押されて俺にいやおうなしに近づく。俺は大丈夫なのだが志織には噛み付いたり掴んだりする。

ゾンビの力は強い。掴まれた場所の骨が折れる。ゾンビの指を折って離すしかないが、間違いなく致命傷をおう。


以前、民家の二階に上がった事がある。狭い階段だった。ゾンビが下から次々と押されて来て危ない状況になった。

逃げ道がその階段しかないのだ。塞ぐ重い物もない。

仕方なく、志織を背負って窓から飛び降り、両足を骨折した。


だから狭い階段から二階に上がる時はゾンビが絶対に二階に上がらないような細工が必要。


警察署の二階。今回は手頃な鉄製の机があるので、それで塞ぐ。上手い具合にピッタリだった。が、二階もロクなモノは無かった。


志織はゾンビを殺すのをやりたがる。経験させたいのだが、万が一返り血を浴びたりすると困る。ゾンビの体液が体内に入ると感染する。


拳銃が欲しいと本気で思う。

ボウガンでもいい。釘打ち機でもいい。

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