現実.8
欲しいモノは数えきれない程あるが、最低限必要な物はほとんど集めた。最初の頃はいちいち店や民家に立ち寄っていたが、すぐに揃うので今では大きな駅と病院と警察署しか立ち寄らない。
絶対に近寄らないのは道場と刑務所。警察署も危ないのだが、やはり拳銃と機動隊が使うヘルメットが欲しい。
死んだ警察官は見つかるのだが先に誰かが盗ったのか拳銃は無くなっている。
刑務所のゾンビと道場のゾンビはやはり強かった。強弱センサーで見てもかなり強く発光している。その強いゾンビが固まって移動している。自分の周りに居たゾンビが逃げ出す。
動作が弱いのだけが救いだが、君子危うきに近寄らず。
食料が在るのは大きな駅の中。
たくさん人が集っていた場所。当然その人間がゾンビになったのだから、ゾンビが大量にいる。普通の人間は絶対に近寄れない。俺には襲ってこないから食料や生活品の確保には最適。
食料を探すならゾンビの多い所を。
なんとも皮肉な話だ。
探す食料は今ではギフト用品の缶詰になっている。缶詰だけは三年経っても腐らない。
人間も今までに何人か見ている。
ここ最近出逢う人間は、運が悪いのか、どいつもまともじゃなかった。いや、まともじゃない世界になってしまったから、まともじゃないのがまともなのか。
歩き続ける間は考える事しかない。考えるのは嫌いじゃない。
「交番発見。左側ね」
志織が言った。見上げると志織は双眼鏡を目に当てていた。少し歩き続けると、俺の視野にも映る。
入り口は空いている。中に人が居たら閉まっているはず。
志織が降りて来た。景色を見るだけの単調な時間からの解放。期待は薄いが暇は潰れる。
ゾンビは中に入ろうとしない。交番に人や死体は居ない証拠。もし居るなら入ろうとする。中にゾンビが居るなら出て来るはずだ。志織がいるから。
俺の強弱センサーは壁向こうは見えない。閉まってる部屋の中とかはセンサーでは分からない。真っ暗なら、隙間から溢れた僅かな光で分かる時もある。
ゾンビは違うらしい。部屋に閉じ込めたが、志織が近付くと、ゾンビは近付こうとドアに身体をぶつけてくる。
何で分かるのかは全く分からない。
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