アストロノート

少女は言う。


シロの森は白の森、

白は素(しろ)、

なにもないはじまりのシロ


はじまりは、帰ることが出来なくて、

それはただ

そこに残っているだけのもの。

わたしはいつも

ここから呼び続けるけれど、

誰も振り返ることは出来ない。


けれども、

あなたの物語が、ある一つの不連続な物語を微分するとき、あなたはこの場所を知ることが出来るの。



「お願いです。

 どうか僕の森を守って下さい」


それは小さな祈りでした。


その声は、本当ちいさな声だったので、この世界のほとんどに届きませんでした。


もし聞こえても、聞こえなかったふりをしました。


けれども、星の世界にいた或る宇宙飛行士の胸にだけ確かに届きました。


祈りの主は、一人の少年でした。


地上に降りた宇宙飛行士は、

少年の、やっぱり小さな森を守るため

命がけの冒険をしました。


なのに、少年の小さな臆病が、

少年と宇宙飛行士の間を引き裂いて、

少年は、森から出ることが

出来なくなってしまいました。



小さなころに授かった


仮の時計を壊したあなた。


ほんとの時計はどこにある?


思い出した三本の


針を留めるポラリスで、


まわれ天輪羅針儀よ。


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