第9話 ブラック川蝉電業

東京都西多摩郡奥奥多摩町…《川蝉電業》はココにある。


奥奥多摩町の町長は今日もご機嫌伺いに《川蝉電業》社長室に出向いていた。


「あ~どうも…毎度お世話様に成っとります。

社長…最近ゴルフのほうはどうですかの?」


「こりゃあ…町長さん、まんずまんずですよ。

話は変わるんですが、半導体事業部の工場を少し拡張したいんですよ。」


「お任せください。土地は なんぼでも ありますよ。」


社長 「大きな事業ですから大きな金が動きます。

30億の工費なら10%くらいがマージンです。


うんと贅沢しましょうや…。」


………………………………


専務 「んっ?…俺の車に鳥の糞が付いとるぞ!

小林!はよう掃除しとかんか!言われない内に気付けや!」

…………………………


秘書課の女の子 1「専務って相当 女の子泣かしとるらしいで…。」


女の子 2 「私は常務にヤられたわ…職権乱用よ…。」


…………………………


総務部長 「なんだと…会計の収支が合わん?

計算ミスじゃないのか?


そんなことじゃあ昇進はさせないよ…。

うまく収支を合わせるのも会計課の仕事じゃないの?」


…………………………


総務部長 「専務…会計課長が収支が合わないって騒いでましたよ。 一体いくら持ち出したんですか?」


専務 「なあに…社長と常務の3人で500万ずつだよ…天下の《川蝉電業》だから…はした金だろ。」


「それに会社の女の子に手を出すのも…程々にしておいてもらわないと…都会じゃあセクハラはタブーになってますから…。」


「ああ…じゃあ10人位に留めとくよ。ハハハ…。」



出院は真由美から依頼されて《川蝉電業》の悪事を暴こうと若い男を二人雇って、会社に潜入した。


真由美が手配して親会社からの人事という事で3人は庶務課へ配属された。


出院 「すんません。何も分からんもんで。」


庶務課長 「ああ…親会社からの人事だから…あんまり期待してないから…まあ適当に時間潰しといてよ。」


出院は早速 《川蝉電業》の金の流れをチェックした…。


[1…10…100…1000…10000…

オイオイ! 1年間で10億円も収支が違ってるじゃないか!]


雇われ A君 「出院さん…資料が確かなら、関わっているのは、社長、専務、常務、総務部長の4人ですね。」


雇われ B君 「私は常務と総務部長をマークします。」


A 君 「じゃあ、私は専務を…。」


出院 「私は社長をマークしよう。」


…………………………………


総務部長「おい! このBMWW M5をくれ!」


BMWWディーラー 「毎度有り難うございます。

景気が良いですねえ。羨ましい限りです。」


「いやいや…これでも気苦労が多くてね。

まあ…ご褒美ってとこかな…。」


B君 「このM5良いですよね。 でも僕なんかの給料じゃあ高嶺の花ですから…ホント羨ましいですよ。」


「いやあ…人目が有るからねえ…この車は別の車庫で保管しようと思ってるんだよ。」


……………………………………


常務 「おい!ボーイ君…綺麗どころを頼むよ。

今日は朝までドンチャン騒ぎだ。


こんな田舎だから飲んで騒いでも知れてるとは思うけどね。


えっ…女の子? そうだな10人くらい呼んで貰おうか…ハッハッハッ……。」


………………………


店員に扮したB君 「常務さん、お料理のほうは特松、松、竹、梅のどれにいたしましょうか…?」


常務 「君…僕らが《川蝉電業》の者だと知ってのオーダー聞きかい?


特特…特松に決まってるじゃないか ( ≧∀≦)ノ」


B君 「ではお一人様五万円のトリプル特松でございますね…。お酌の女の子は一人三万円でお願いいたします。ごゆっくりなさいませ。」


…………………………


会社の女の子A 「イヤ……私に触らないで…私、結婚が決まった人がいるんです。」


専務 「ふんっ、そうかい。 その結婚相手っていうのは《川蝉電業》の社員じゃあるまいね?

もし…そうなら、その相手を左遷して二度と会えないようにしちゃおうかな…。

なあに…俺は狙った女に振られた事ないんだよ。

だって僕に嫌われたら…もうこの町じゃあ生きていけないだろ…。

君も少しの間 我慢していれば…僕が気持ち良くさせてあげるからさ…。」


女の子A 「いやあ…近づかないで…。アッ…アッ…イヤア!」


雇われ A 君「あのう……ココの資料室って広辞苑ありましたっけ?」


専務 「あのねえ…ここは遠慮する処じゃないの…。 俺を誰だか知ってるのか?」


A 君 「ん…良いんですか? ボイスレコーダーに録音しちゃいましたけど…。僕、川蝉グループ本社の人間とコンタクトあるんで…。」


専務 「上等じゃねえか…今日のところは勘弁してやるよ…。 覚えてろよ!」


………………………………


専務 [まったく…気が利かないっていうか…

女は唯一の俺の楽しみなのに…結婚が決まっていようが…どうだか関係ないよ。]


ヤクザに変装したA君 「旦那…困りますね…昨夜、友理奈って娘をナンパして無理やりホテルに連れ込んだでしょ? 


あの娘…おれの妹なんですよ! 

処女を奪われた…って泣いて帰って来ましてね。 


17才だし…マズイですよね。 警察に一緒に行ってくれますよね!」


専務 「ああ…20才じゃあ無かったのか…。」


A君 「旦那…友理奈は ちゃんと17才だって言ったそうですよ。

 

兄として妹を無理やりヤられたんだから…ヤクザとしても面目丸潰れですよね。 

指…詰めてもらいますよ。」


専務 「指を詰める……君…金ならいくらでも出す! 指は勘弁してもらえないか! この通りだ!」


A君 「ダメだね…。 妹に土下座して…社員全員に説明して…指詰めた後に5000万円!

( ̄ヘ ̄メ) 」

…………………………………………………………


常務 「社長…またゴルフのセットを新調されたんですね…ドイツ製ですか?」


社長 「株で儲けたんだよ…。

元手と情報は会社に豊富に有るからね…。


いや、損をする時も有るんだよ、先月は5000万円の含み損で会社に見て貰ったよ。」


常務 「儲かっても…損をしても…大丈夫って事ですね。 


それじゃあ だいぶ投資してるんじゃないですか?」


社長 「ああ…株は面白いよ。」


……………………………


社長と常務は新宿歌舞伎町へ遊びに出た。


常務 「社長…今日はどんな店に行ってみますか?」


社長 「そうだな…大概の遊びは堪能したからなあ…後は 際ものとかかな…。

おっ…若い娘も良いが…この《人妻倶楽部》ってどうだ?」


常務 「良いですねえ…やっぱり女は人妻ですよ…。まあ入ってみましょうか。」


社長 「なんだ年増ばっかだな…あれっ? あいつ…うちの女房だよ! なんでこんな所で…。」


ホステス A 「あら…どこのオッサンかと思ったら…うちの旦那だわ! 東京都も狭いものだわ…。 

あら…いらっしゃい。 こんな処で偶然ね…。」


社長 「一体どうしたっていうんだ?…

何が不足で…こんな店で働いてるんだ?」


社長の奥様(ホステスA)

「あなたが《株だ》《ゴルフだ》って全然構ってくれないからよ。」


社長 「金は余るほど渡しているだろう?

そりゃあ…毎晩数十万ずつ使ってたら足りないだろうが…。」


奥様 「あなたこそ…一晩で数十万も使っているんでしょう…。 だったら不公平だわ。 私だって好きなモノを片っ端から買ってやるんだから…。」


出院 扮するホストっぽい男

「社長さん…奥様を大切にしないと…

私達ホストは、満たされない思いを持った奥様方を、お金を沢山使ってもらって…喜ばせて差し上げてるんです。

いわば 旦那のエゴの埋め合わせですよ。

ちゃんと愛して大切にしてあげれば良いものを…。」



社長 「女達から金を巻き上げるホストの君から言われたく無いね!

不愉快だ! 常務、店を変えるぞ!」


社長と常務は憂さ晴らしに如何わしい 店に入った。


B君扮する店員 「いらっしゃい…社長、良い娘が居ますよ…。」


社長 「ああ…若い娘にしてくれ。 人妻はダメだぞ…ピチピチの若い娘を…。」


店の女の子のC子

「いらっしゃい…あれっ!お父さんじゃないの!

まあ、娘みたいな若い娘をどうする気なの!

最低!」


社長 「お前こそ!こんな店で何やってるんだ!」


娘のC子 「コッチこそ…こんな店に来るお父さんに言われたくないわ! もう帰ってよ!」


社長は皆に言われ放題…それ以上どこの店に入る気も失せてしまった。


そこへ妻から電話があった…。


《あなた?私だけど…さっきはご免なさい。

あのね、投資話があるのよ…。

日本海の油田を掘る新会社なんだけど…

今 買うと半年で2倍になるんですって。

少額なら私が出すんだけど…万株1億円からなんですって…

あなた…さっきの事を全部許すから、

お願い!☆》


社長は高いなと思いながらも承諾した。


[これで妻の機嫌が直るなら良いか、

2倍に成るって言うし…。]


…………………………


社長 「総務部長…済まんな、半年間の投資だから…その時はお礼方々優遇させてもらうからさ。」


常務 「社長…そんな良い話なら私も載せてくださいよ…倍でしょ…半年で。」


………………………


その三日後…


社長の妻《もしもし…あなた? 実は油田の投資話なんだけど…

どうも…ヤられちゃったみたいなの。 

ご免なさいね。 

それから他の知り合いにも話を勧めたから…

当分 家へは帰れないわ。

じゃあ切るね。 ブチ!》


社長《ああっ? 桐子!桐子!こら!

切るな! 金はどうするんだ!

あれは、会社の金だぞ! ああ!》


………………………………………………


次の日、《川蝉電業》に国税庁の査察が入った!


査察官 A 「はい、ここの二千万収支合って無いよ!」


査察官 B 「ここは一億も使途不明金があるわ!」


査察官 A 「なんだ、この接待費三百万って?

季節外れの大忘年会か?」


査察官 B 「《キャバレーANGEL》の食事代5人で五十万はダメでしょ!」

………………………………………………


町長と警察官もやって来た。


町長 「専務さん…すんません。

いろいろお世話になったんですが…

警察は押さえきれなくて…

17才はイケんかったですね。」


警察官 「川蝉電業◯◯専務を13:40に逮捕!

1週間くらいは臭い飯食うてもらうで…。」


…………………………………


真由美と杏の姉妹は…出院から少し状況を聞いていたので、テレビのニュースに


《川蝉電業に家宅捜索、専務に逮捕状!》

と出て…ホッと胸を撫で下ろした。


[やってくれたわ! 出院さんは期待を裏切らないわ…。]


テレビニュースをよく見ると…

画面から出院が手を振っていた…。

……………………………………………………


真由美 「出院さん、有り難うございました。

お陰さまで…川蝉電業の悪党どもを退治できました。」


杏 「出院ちゃん、良い仕事するねえ…

うち(川蝉グループ)の傘下に入らないかい?」


出院 「杏さん…それって内部に成ると正規の料金が請求出来なくなる…っていう経費節減の思惑ですか?」


杏 「ハッハッハ…バレたか! いや…出院ちゃんを仲間だと思っての事だよ。 なんなら俺の婿になって川蝉グループの一員になってみる?… 」


出院 「杏ちゃん…それは…新手のプロポーズかい?」


杏 「出院さんってさあ…度胸があって、男気で…

なんか惹かれちゃうんだよね。」


出院「歳の差は…結構有りますけどね。」


杏 「ああ…焦れったいねえ!

一体いくら出せば…私のモノに成ってくれるのさ!」


出院 「じゃあ…一億円で!」


杏 「よし! 買った!

フッフッフ…じゃあ明日から結婚準備をするように! 

それから今夜は二人でデートな!

身体は綺麗に洗っておくように!」


出院 「(タラー…)本気だったのね…。」


……………………………


出院は久しぶりの事務所に座って…ため息をついていた…。


机の上に足を置き…「結婚かあ…。」

出院は、昨夜の杏とのデートを思い返してみた。


…………………………


杏 「お待たせ~☆」


可愛い☆


出院 「君…ホントに杏ちゃん?」


杏 「お前…ぶっ飛ばすぞ!」


出院 「ああ…本物みたいだ…。」


それからの二人は絵に描いたような恋人同士を演じた☆


出院 「では…お約束のキスを…。」


杏は急に意気地が無くなっていた。

「キスは… キスは結婚式の時じゃあダメなのか?」


出院はクスっと笑って「良いですよ」と言った。

[杏ちゃんは今日から一人キスの練習するんだろうな]と思うと…思い出し笑いになってしまった。


杏 「何だよ?…」

出院は「何でも無いよ☆」と言って杏の腰に手を廻した。


杏「くすぐったいよ!やめてくれ!」


出院は[大丈夫かなあ? 本当に結婚生活できるのかなあ? 


よし…ここは将来の拓人君(自分自身)に投資するつもりで作戦を立てようか…。]


(出院)拓人の立てたミッションとは…


[①杏ちゃんが素直に拓人に気持ちを伝えられるようにする。

②杏ちゃんが女としての幸せを感じられるようにする。

③拓人との間に赤ちゃんを産んで育てたい気持ちにさせる。

④女として振る舞えるようにする。

⑤拓人とラブラブになる。

以上!]



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