第8話 バーレーンへ再び……
護衛の二人はお母さんに勧められたケーキを頬張っていたが…杏が飛び出したので、慌てて杏の後を追った。
「失礼します!ケーキ美味しかったです…。」
護衛の一人は片言の日本語で礼を言って行った。
…………………………………………………………
「出院(拓人)さん……次の依頼です…。
杏を連れ戻して欲しいんです……。
そして川蝉グループの経営をオッケーさせて欲しいんです。」
真由美は そう言って頭を下げた…。
「真由美さん…これは難しいミッションだ…。
高くなるよ。
きっとまたバーレーンまで行く事になるだろうから…。
それに…生きて帰ってこれるかどうか…。」
「分かっています…杏は一度決めたらテコでも動かないタイプです。
出院さんだから…なんとかしてくれるかも知れないって…」
出院 「川蝉グループ……跡継ぎ……
報酬 次第ですが。」
「分かりました。 成功報酬として1000万円出しましょう…。」
出院 「経費は別でお願いしますね。 それから今度はエキスパートの兵士を連れていきます。 彼らの日当は一人一日10万円で…。 その代わり吉報を持って還りますよ。」
「ダメな時は報酬は無しで…。」
出院 「厳しいですね。 まあ、それくらいで無いと経営は出来ないって事ですね。」
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杏は父の見舞いを終え、バーレーンに向けて飛び立っていた。
護衛の二人は疲れているらしく、時々居眠りをするので、もう一人が相手に気合いを入れている! バシッ! ドスッ! ゲッ! ウッ!
「うるさいぞ! 静かにしてろ!」
杏は[これで良かったのだろうか?]と一人考えていた…。
拓人はプロの兵士を二人雇い…バーレーンへと向かった…。
現地で武器を調達して3人は杏と話す機会を伺った。
拓人「では…今から作戦会議を行う!
杏さんの事をターゲットと言う…。
ターゲットは日本へ必ず送還する…。
ターゲットを説得して川蝉グループの経営をする気にさせる…。
以上だ。」
兵士A 「大芝居を打ちますか? ターゲットがその気になるような…。」
兵士B 「戦闘機乗りの性格を逆手に取って…川蝉グループを経営する事が自分の使命なんだと思うように誘導しますか…。」
拓人 「絶対にターゲットを無事に日本に連れて帰るんだ! 生きて帰国させる事を最優先の任務と思ってくれ!」
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次の日から拓人達は悪徳企業になりすまして杏に近づいた…。
「杏さんですか…。
実は我々は川蝉グループのライバル会社なんです。
我々の願いは川蝉グループの失墜…破綻に追い込む事です。
手を貸して貰えませんか?」
杏 「何を言いやがる! 俺にとっちゃあ川蝉グループなんぞ…どうでも良い事よ! 煮るなり 焼くなり 好きにしてくれ!」
兵士A 「なかなか乗って来ませんね…。」
拓人 「いや…口では ああ言っているが少しは気になっている筈だ…。 杏さんって…そういう人だよ。」
杏の戦闘機はいつに無く激しい攻撃を行っていた!
杏が機銃のボタンを押そうとした時に子供が飛び出して来た!
杏の機体は大きく旋回して攻撃目標を変更した!
[俺とした事が…甘いな! その甘さが命取りになる! 戦場とは…そんなものだ!]
…………………………
拓人は日本の真由美に応援を要請した…。
杏に その気になってもらう為に一芝居打ってもらおうと思ったからだ。
「今、杏がその気になったとしても後からウソだとバレると厄介だな…。
そっちで…もう少し頑張ってくれないかな?」
拓人は真由美に見放された思いがした。
表に出ると戦場が広がっている…。
「行くぞ! 日本じゃあ…この戦場の雰囲気は分からないだろう…。」
拓人と雇った兵士達は杏に会いに空軍基地へ向かった!
杏は訓練飛行を終えて一息ついている…。
「おっ! 出院さん…またバーレーンまで来たんだね。
でも今度は期待に沿えそうも無いんだが…。」
出院 「今日は杏さんが…なぜ家業を継ぎたく無いのかを教えてもらいに来ました…。」
「お前…バカじゃないのか? その為にはるばるバーレーンまで来たっていうのか?
まあ、そんなに知りたけりゃ教えてやるよ。
私は聞いたんだ! あれは10才になったばかり…… 」
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家政婦A 「真由美ちゃんも杏ちゃんも可哀想だねえ……
川蝉グループって凄いワンマン経営で、大規模なリストラをして…
随分反感を買ってるみたいだから表に出て…虐められたりしなきゃ良いけどね。」
家政婦B 「そうそう…川蝉グループは血も涙もない化け物だって噂よ…
怖いねえ、私達だって いつリストラされるか…。」
(幼い頃の)杏 「えっ…虐め!!化け物!?
……川蝉ってお父さんの会社!?」
幼い頃の杏が お家で遊んでいると、
見知らぬ男が庭に立っていて…
「おじさんは、お嬢ちゃんのお父さんの会社に製品を買ってもらってる人なんだ…
『明日から その製品作らなくて良いから』って言われて おじさん困ってるんだよ。
お父さんに『また製品を作らせてあげて』って言ってくれないかな?」
と言って名刺を渡してくれたんだ。
幼い杏は、お父さんに名刺を渡して…そう伝えたんだけど…。
『大人の話に子供が口を出すんじゃない』って…
数日後にテレビのニュースで、そのおじさんが自殺したって…。」
…………………………………………………………
出院と兵士二人は、それを聞いて号泣した…。
杏 「おいおい…大の男が、泣くんじゃねえよ!」
兵士A 「杏さん…そんな血も涙もないような会社ぶっ潰して…ちゃんと血の通った会社を作りましょうよ!」
杏 「ああ…出来るものならな…。」
兵士A 「杏さん、俺はこう見えてもファイター(戦闘機)パイロットです。 どうですか…俺と勝負して負けたら日本へ帰ってお姉さんと会社を変革するっていうのは?」
杏 「オイオイ! ファイターのバトルじゃ負ける訳ないさ! よし! もしも俺が負けたらな…。」
………………………
兵士 A は、杏にファイターバトルで勝つために訓練飛行をしている!
出院[頼むぞ! 勝ってくれ!]
………………………………………………………
いよいよ対決の日が来た…。
杏 「手加減しないわよ!」
兵士 A 「望むところです!」
2機共 大空へ上がると…先ず杏が仕掛けた!
杏は仮想敵機(兵士A)のテール(尾翼)を捉えた!
その瞬間、仮想敵機は反転して難を逃れる!
そして杏のテールを捉える!
杏の機体も反転して捉えさせまいとする!
何度目かに仮想敵機のテールを杏が捉えた…。
その時兵士Aは機体を左右に振って機首を起こした。
杏は突然現れた山肌に驚いてスレスレで かわした!
杏[仮想敵機が合図してくれなかったら…山に突っ込んでいただろう…。]
…………………………
兵士A 「杏さん…完敗です。 杏さんの望む通りにしてください…。」
杏 「お前…ズルいよ…。本気出したら…きっと私はヤラレているよ…。 ナゼ私を助けたんだ?」
「……優秀なパイロットだからです。 実に惜しい…。」
杏 「何が惜しいんだ?」
兵士 A 「杏さんは…きっと日本へ行って会社を変革してくれるでしょう…。
ここのパイロット達が寂しがりますよ…。」
杏 「アンタにゃ負けたよ…。
パイロットの腕も…人間としてもな。」
出院 「じゃあ…日本へ一緒に帰ってくれるんですね…。」
「ああ…血の通った暖かい会社を作りたくなってな…。」
…………………
出院と杏…そして雇った二人の兵士が日本へ帰国した。
真由美「杏…お帰り。」
母 「お帰り…きっと帰ってくれると信じてたわ…。
出院さんと兵士の二人にもお礼を言うわ。
有り難うございました。
これで川蝉グループも安泰だわ…。」
杏 「お母さん、お姉さん、今まで勝手な事ばかりしてきて…ごめんなさい。
でも私は小さい頃から お父さんの会社の嫌な面ばかりを見てきたの…。
私は…暖かみのある会社を作りたいわ…。」
母 「そうなのね…杏の思い通りに やってみたら良いわ…。」
……………………………
真由美 「出院さん…有り難うございました。
かなりの難問だったと思いますし、
命がけの仕事だったと思います。
これは成功の報酬です。
遠慮無く収めてください。」
出院 「有り難く頂戴します。」
真由美「それで…次の仕事なんですが…。」
出院 「海外ですか?…それとも国内?」
「先ずは国内から…。」
出院 「良かったです…。日本食が食べたくて…。」
真由美 「依頼内容は…川蝉グループの中の一つの会社に《川蝉電業》というのがあるんだけど…
そこの社長、専務、常務、総務部長が裏金を溜め込んで会社を食い物にしているという情報が入ったの。
この情報の是非を調査してほしいの…。
川蝉グループの膿を出したいのよ。」
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