第3話 玲奈の家族達
美代子は田代啓介と5階の社長用の寝室で二人寝転がっている。
「ねえ☆ケースケ……コッチ向いて☆」
「ダメだよ……良い子は早く寝てください☆」
5分もしないうちに美代子は寝息を立て始めた。
啓介は美代子に布団の上掛けをかけ直してやろうとした。
長い美代子の脚がガウンから出てて…
[ヤベー! 母親に……俺って鬼畜!]
啓介は寝室のドアを締めて、預かっている鍵を掛けた。
[全く無用心だよな……社長が襲われて…って、よくある話じゃん。 まあ、俺が護ってやるしかないかな。]
啓介が最後の書類を片付けて会社を出ると…
シルクハットを被った変なオヤジが昔のチャップリンのパントマイムみたいなのをやってた。
その前に置いてある箱に500円玉を入れてやった。
「おつかれ~☆」
啓介は片手を上げて通り過ぎた。
[そんなに悪い奴じゃないのかな?]
拓人(ディーン)は白塗りにした顔を濡れたタオルで拭いた。
拓人は啓介の尾行を開始した。
啓介は落ち着いて呑めそうなパブに入って行った。
「ケースケ~☆ コッチ コッチ!」
真っ赤なスカートが似合う派手な感じの女性に啓介は呼ばれている…
拓人(ディーン)[啓介君の彼女か… 友達?]
「姉貴…どうしたんだい? こんな時間に俺を呼び出したりして…。」
「それがさあ…ちょっと聞いてよ☆ ◯◯がね…××なんだって…それでさあ◇◇はもう絶対△△しないんだって…可笑しいでしょ…」
「つまり…姉貴は、また振られたって訳だね。」
「振られたんじゃないわよ! コッチから振ってやったのよ! だって◯◯が××で…もうやだ!」
「じゃあ…送っていこうか。 もう相当呑んでるんだろ。」
「あら…私は酔ってなんか無いわよ☆ ちょっと地球がグルグル回ってるだけなんだから…」
「分かった…分かった。 はい、行くよ。」
「ケースケ☆サンキューね。 こんな姉ちゃんの話を聞いてくれるのはケースケだけだよ。」
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タクシーの中で赤いスカートの女性は啓介に抱きついてキスしたりしてる…
「姉ちゃん……やめろよ。 酒グセ悪りーな!」
「姉ちゃんはね…ケースケが だあい好き! ケースケみたいに優しい男いないかなあ?」
「姉ちゃんだから…付き合ってるんじゃん。 他人だったら放り出してるよ。 まったく。」
拓人からは会話の内容まで聞こえないので、まさか啓介の姉さんだとは判らなかった。
拓人(ディーン)は玲奈に昨夜の田代啓介の動きを全て伝えた…。
「ええっ……お母さんといい…相手の田代といい、一体私の周りの人達は どうなっちゃってるの? 私……何か とんでもなく悪いことしたのかしら…? もう頭の中…グシャグシャ☆」
「それにしても腹立つわ! お母さんも…お母さんだけど、田代も…田代よ! ここは、ギュッとお灸を据えてやらないと腹の虫が収まらないわ!」
「私…田代に問い詰めてやるわ! あなた…私のお母さんを弄ぶ気なの?って!」
「玲奈ちゃん、分かったよ…、じゃあ俺は玲奈ちゃんのお母さんの様子を伺っておくよ。」
拓人は立て続けに喋る玲奈の合間に言った。
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その日の夕方に田代が会社から出た所で、玲奈は田代啓介に声を掛けた。
「田代さん…」
「ああ…玲奈ちゃんだっけ?…社長のお嬢さんの。」
「田代さん…率直に聞くわ! あなたとお母さんって…どういう関係なんですか!」
そう問い詰める玲奈の目は厳しかった。
「う~ん☆社長と社員の関係…。」
[ウソおっしゃい!]そう言おうとした玲奈に田代は続けて言った。
「まあ…それ以上かな…。」
[あら…あっさり認めたわね!]
「それって…男と女の関係…っていう解釈で良いですか?」
それを聞いて田代啓介は大笑いをした。
「ああ…ゴメン、社長と僕が…男と女の関係?
こりゃあ…良いや!」
「何が…そんなに可笑しいんですか! 私…真面目に話してるんですよ!」
「あのね…社長と僕は親子なんだよ。」
「はっ! 言ってる意味が分からないんですけど!」
「玲奈ちゃんは…お母さんから聞いてなかったんだね。 僕からじゃあ…信じられないだろうから…お母さんに聞いてごらんよ。」
そう言うと、啓介は 「じゃあ!」と街中へ歩いていった。
[ちょっと待ちなさいよ!]と言うタイミングを逃して玲奈は立ち尽くした。
[これは…もうお母さんに聞くしかないわ!]
そうして、玲奈はお母さん(美代子)に会おうとお店(CREST)に向かった。
母 美代子は店(会社)の5階のリビングにいた。
入ってきた玲奈に
「玲奈…今日も家に帰れそうも無いわ…来週にうち(CREST)のファッションショーがあるの…。」
「お母さん…私に…お兄ちゃんとか 居たりする?」
美代子は飲んでいたコーヒーをこぼしてしまった。
「そっかあ…誰かから先に聞いたんだねえ…
実は…いるのよ。」
そう言った母 美代子の目は潤んでいた。
「あなたのお父さんに出会う前にね、お母さん20才の時に結婚したんだよ。 そして一女一男の子供が出来たの。 幸せだったわ。 でも2年後にそのお父さんが病気で死んじゃったの…。」
「そうなんだ…私にお兄ちゃんとお姉ちゃんがいるんだ…。」
………………………
母 美代子「もっと早く玲奈に話そうと思ってたんだけどね…。」
玲奈「良いのよ…お母さん…今なら私…ちゃんと受け止められるから。」
「ゴメンね…こんな大事な事を黙ってて…。」
「いいの…お母さんは私の何十倍も何百倍も 苦労してきたんだから…この事を話すタイミングはお母さんが一番よく知ってる。 今で良かったんだよ。 もっと後でも良かったし。」
玲奈は美代子にハグをした。
「お母さん…。」
先に泣き始めたのは美代子のほうだった。
「私…お母さんが大好き☆ 今夜はお母さんと一緒の お布団で寝たいな。」
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そんな事を全く知らない拓人(ディーン)は…
[玲奈ちゃん…いよいよお母さんに問い詰める気だな。 あれあれ~☆ 二人ハグしちゃってるし。 仲直りしたのかな? 全く…女心と秋の空ってヤツかな☆]
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啓介は、このタイミングで美代子と玲奈が親しくしている5階のリビングへ入ってきた。
田代啓介 「入って良いですか! 」
社長(美代子) 「どうぞ!」
「社長、イベント用のデザイン画の Aプランがまとまりました。」
「ありがとう。 遅くまで申し訳なかったわね…。」
「いえ…大丈夫です。」
「ちょっと座ってもらえるかな。」
書類を美代子に託して部屋を出ようとした啓介を呼び止めた。
ソファーに座った啓介に
「お母さんね…あなたの為に、このお腹を痛めて女の子を産んであげたのよ。 ほら、これが…あなたの可愛い妹よ。」
「そして、玲奈の為にね…あらかじめ お兄さんを産んでおいてあげたのよ。 一人っ子じゃ寂し過ぎるでしょ。」
「ほらあ…二人とも何ていう顔してるのよ…いきなりは無理だろうけど…少しは笑顔見せなさい…。」
啓介「玲奈ちゃん…だったよね、宜しく。」
「ちゃんと挨拶できて…さすが お兄さんだわ。」
玲奈「ああ…啓介兄さん…こちらこそ 宜しく。」
美代子は最初に啓介をハグして…次に玲奈にハグをした。
「ああ…3人産んでおいて良かったわ。」
啓介[ああ…姉貴も居るんだった! ややこしく成らなきゃ良いけど……。]
玲奈[啓介兄さんとは…なんとかやっていけそうだけど…お姉さんって どんな人なんだろう?]
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