第2話 玲奈の日常

玲奈「お母さん…来たわよ?」


「あら…どこの可愛い娘さんかと思ったわ♡」

玲奈のお母さんは玲奈に優しかった。


玲奈「お母さんが忙しくて、なかなか家に帰ってきてくれないから…」


美代子(玲奈のお母さん)

「ゴメン、ゴメン…玲奈に会いたかったわ♡」


「エヘン、そうだと思って玲奈のほうから訪ねて来ました~☆ お母さんの誕生日でしょ…だからクッキー焼いて持ってきたの♡」



「あらあ、ありがとう。 なんて優しい娘なんでしょ。」

母の美代子は玲奈にキスをする勢いでハグをしてきた。


玲奈「あれ? お母さんコロン変えたの? 前の匂いのほうが好きだったのに~☆」


美代子「たまにはイメチェンよ♡」


店の奥のほうから…二人の様子を店の従業員らしき20代の男の子が伺っていた。


「ああ…紹介するわ。 田代啓介君…デザイン担当してもらってるの。 これは娘の玲奈よ。」


「はじめまして。 田代です、社長には いつも良くしてもらってます。 宜しくお願いします。」


「私は娘の玲奈です。 本田玲奈、高校2年なの。 宜しくね。」


玲奈は女の勘で…田代啓介と母 美代子は特別な関係かもしれない…と思った。 淡く香るコロンが母のそれと同じだったし…


「玲奈、ゆっくりしていくと良いわ♡ 5階のリビング…自由に使って良いから。」


玲奈は[それでは…]と、リビングの扉を開けた。 

[お母さん…趣味変わった?]

あまりインテリアに拘らない母の使うリビングにエスニック調のインテリア…


玲奈はイケナイと思いながら…母が遅くなって帰れない時に寝る為のベッドルームを覗き込んだ。


几帳面な筈の母のベッドはシーツがグシャグシャ☆



そっと…シーツを観察すると、母の長い髪の毛に混じって金髪の短い毛が落ちていた。

[まさかね…。]


玲奈は[母と金髪の男性が……]と想像してしまった。


玲奈はピンときた! 金髪……アイツだ! あの男の子! 確か名前は…田代啓介だったかな。


[だいたい……お父さんとは内縁の夫婦だから……

ありかもしれないけど。]


でも玲奈は あの男の子は、あまり好きになれなかった。

[お父さんが可哀想!]


ベッドルームのドアを閉めて10分くらいしてから…母がリビングへ入ってきた。


「玲奈、お構いも出来なくてゴメンね。 休んでくれても良いんだけど…後でシーツ変えとくから。」


「お母さん、お構い無く。 眠くないし、お母さん仕事忙しいの分かってるから…」


「この娘はいつから物分かりの良い娘になったのかなあ……ありがとね。」


母にハグされたのは嬉しかったけど……変えたコロンの香りが好きになれなかった。 


やはり疑ってるんだな私……


玲奈は母 美代子の潔白を確信したかった。

[お母さんが…あの男の子と……

いやだ! そんなこと無い! 調べてやる!]


玲奈は母の店の従業員に聞こえないように…

外の雑踏の中で、ディーンに電話した☆


「はい、オヤジレンタル株式会社! ああ、玲奈ちゃんか… ほお! 仕事だな!

えっ? お母さんの浮気相手の調査? 了解! じゃあ後でね☆」

……………………………………………………………


「まだ、お母さんが浮気してるかどうかも判らないの。 とりあえず…張り込みしてほしいんだ。 潔白なら潔白と確信したいの。 お母さんの長い髪の毛と一緒にあった短い金髪の主をさ☆」


「俺も、玲奈ちゃんのお母さんの潔白に掛けるよ。 玲奈ちゃんの悲しい顔見たくないからさ。」


「ありがとう、優しいんだね。」


「いや~☆ 営業トークだよ☆」


「褒めて損したわ☆ ははは。」

……………………………………………………………


「ミス・レイラ……スタンバイ オッケー! 資金が豊富だと段取りが良いわ☆ こちら隣のビルの空き部屋から……そちらのビルの5階…ベッドルームも良く見えるよ☆」


「ディーン、了解! 私、お母さんの潔白に100万掛けるわ!」


「ああ、俺もそう願ってる…」



夜になった…

玲奈は、この調査の結果を知りたくて、ディーンの隣で母のCRESTを見張っている。


5階のリビングの灯りが点いて、母 美代子が入ってきた。


ベッドルームにも灯りが点いて美代子は楽な服に着替え始めた…


玲奈はディーンに目をやり…[着替え終わるまで見ちゃダメ]と目で訴えた。


ディーンは両手を少し上げて[つまんねえ…]のポーズをして玲奈に見張りを少しの間 譲った。


5階のリビングに他の誰かが入ってきた。

玲奈は胸騒ぎがした。


金髪だ! アイツだ…《田代啓介》

美代子の寝室の前で何か言ってる…業務報告?


玲奈は田代君が少し周りを警戒してるように見えた。


田代君はリビングを出て行った。


美代子はシャワーを浴びた。

そしてリビングのソファーでデザイン画らしき書類を見ながらコーヒーを飲んでいる。


そして…アイツがリビングに入ってきた。




田代君は書類を持って入ってきた。


「社長…例のデザイン画ができました。」


「あら、ありがとう。 田代君ゴメンね。 こんなに遅くまで付き合わせちゃって…」


「いえ…良いんですよ、今日は別に用事も無いし…」


田代は社長の羽織っているガウンからスラリと伸びた綺麗な足を見てドキッとした。

[社長って美人でスタイルも良いし…きっとモテるんだろうな]


「田代君…ここの所…もう少し明るい赤にしたらどうかな?」


「えっ…社長、どこですか?」

田代は社長が座っている側に座り直して説明を聞いた…。

…………………………………………………………


玲奈「大変! ついに二人は寄り添ったわ! ママったら…そんな若い男の子を食べちゃうわけ!」


ディーン「それは大変だ! お嬢さん…どうする? 乗り込んで制止するか!」


玲奈「いえ、まだ田代君を食べちゃうと決まった訳じゃないわ! もう少し待ちましょう!」

……………………………………………………………


美代子「でも田代君のデザインは素敵ね、ほのぼのとした淡い色使い…好きだなあ。」


田代「社長…ありがとうございます。」


美代子「田代君…ここでは〈社長〉って呼ばないで…」



「お母さん……」

田代は美代子の事をそう呼んで…

美代子が広げた両腕に包まれた。


……………………………………………………………


「ディーン! 大変よ! 二人が抱き合ってるわ☆」


玲奈は携帯でズームアップして証拠写真を撮った。


「玲奈ちゃん…何て言ったら良いか…悪かったね。」


「あっ! お姫様抱っこしてる! そのまま寝室へ入ったわ! お母さ~ん☆」


「ディーン…私、あの田代って男の子…信用出来ないの。 きっと…アッチ コッチの女性をタブラカしてるに違いないわ。 私は お母さんを見張るから…ディーンは田代を尾行して!」


……………………………………………………………


「ねえ~ケースケ… お母さん お姫様抱っこしてほしい…」


「え~☆ こんなの誰かに見られたら…」


「大丈夫だよ。 あなた…亡くなったお父さんに良く似てるわ」


「お母さんったら…今日も少しだけ添い寝してほしいの? 少しだけだよ。 まだ用事があるんだから…」

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