懐かしのボストン
ボストンは先の第二次南北戦争や、ナーキッドとの戦争でも被害を受けず、よきアメリカを残していた。
滞在は一日だけ、厳重な警護である。
リムジンに乗り、懐かしいボストン……
しかし初めて見る物もある、ボストンのシンフォニーホールが、信じられない会場になっていたのだ。
公売会場……奴隷の競売場……
用意されたホテルに荷物を下ろし、遅いランチにニューイングランド・クラムチャウダーを頼むと、シェリルが少し涙ぐんでいた。
彼女はまだ父親がしっかりしていた頃、九歳のころに両親とボストンに来たことがあるそうで、その時、ボストンの名物料理である、ニューイングランド・クラムチャウダーを食べたそうだ。
懐かしいボストンの味……
ニューイングランド・クラムチャウダーを食べながら、セレスティアは思った。
なんとか、このアメリカを……せめて南米なみに……
十分に人々は悔いているはず……シンフォニーホールは本来の目的で使用されるべきで、決して恥ずべき会場にしてはならない。
「ねえ、こっそり街を散策しない?」
「非常に危ないのではありませんか?」
「貴女のチョーカーが守ってくれるでしょう?それに禍斗ちゃんもいるしね」
そう云われてはシェリルも同意するしかない。
やはり禍斗が居る以上、安全なのは確実である。
セレスティアはとにかく、公設会場とやらを見てみたかった。
ストリートギャングがたむろし、二人に卑猥な言葉をはいたが、禍斗が遠慮なく熱線を口から吐き出し、人の影が建物の壁に焼きつくことになる。
人間は灰に還った?いや灰さえ残らない。
公売会場は盛況、どんどん人が競売にかかる、ほとんどは女である。
「耐えられないわ……女が多いからとは理解できますが……」
「せめて、マルスの我妹子(わぎもこ)制度ぐらいにならなければ……」
シェリルは淡々と見ていました。
悲しそうな顔をして……
夜、会談の申し出があった。
相手はアメリカ東部第四帝国の総統である。
「デヴィッドソン一族の方が戻ってこられて、偉大なアメリカは歓迎致します」
「本日は昔のことは忘れて、我等の要望をナーキッド幹部会、とくにオーナーのお耳にいれて欲しいのです」
要望とは、アメリカ東部地域を二級に格上げしてほしいとの事、その為には、ナーキッドのどのような条件でも呑むというのだ。
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