忍のある計画


 セレスティアは、

「機会があれば伝える事は伝えますが、まずはそちらの提案によるでしょうね……」

「ミコ様は、どうすれば耳を貸すと?」


「人攫いと麻薬はお嫌いです、奴隷市場もあまり好まれないようですが、でも女はお好き、さらにいえばケチですよ」

 と、返事をした。


 その後、セレスティアは帰りの予定を変更、トロントも見たいと、我儘を爆発させたのである。

 US―3不死鳥は予定を変更して、オンタリオ湖畔のカナダのトロントに立ち寄る。


 これは本当に突然だったが、シェリルがセレスティアの意向を受けて、何とかトロントの元カナダ地域に成立していた政府と連絡をとり、会談を段取りした。


 本来カナダはマルスへ移住したのだが、フランス系の三割ほどの人々は、この地に残った。

 そしてアメリカと歩調を共にして、ナーキッドに敵対したのである。


 この前、トロント政府は上杉忍と、クイーンエリザベス諸島全域の譲渡と引き換えに、デヴォン島直轄領と交易を認められたのだが、二級市民地域への再指定は却下されている。


 トロントの政府はかなり真剣に、自らの地域の再指定を願っているようで、ここでもその為なら、どんな条件でも呑むとの事であった。


 トロントに一泊して、セレスティアはこの地域がアメリカ東部よりさらに治安がよく、南米よりも上と判断した。

 こうして二泊三日の、セレスティアの故郷アメリカへの旅は終わった。


 シェリルは小笠原高女の寄宿舎に戻り、セレスティアが硫黄島リゾートホテルでのんびりとしていると、上杉忍がやってきた。

 忍はある計画を打ち明ける。

 

 惑星テラは、将来直轄惑星に予定されている。

 そしてテラのハレムは現在テラ・メイド・ハウスのみ、人員規模もかなり少ない。

 そこで忍は、二級市民地域から、テラ・メイド・ハウスへの女官採用を考えている。


「私に協力しろとおっしゃるの?」

「はい」

「しかしテラの二級市民地域は、先のテラのナーキッド撤退のおりの裏切りで、ミコ様の怒りを買っている」


「ハレムといえば、つまりはミコ様のお側につかえる女を献上する、特権を与えられた地に創設されるもの、この大原則は変わらないと思いますが?」


「それは分かっています、しかしいま、東アジアの香港には、大陸の女たちを集めて技芸学校が創設されています、それはミコ様のご許可を頂いております」


「技芸学校とは、ミコ様がその地域にお越しになる際、夜のための女を養成することを建前にしていますが、その実は、地域の統治をする官僚の養成校です」


「卒業すると女給という地位を与えられます、末女の下、エラムの女官補と思えばいいでしょう」


「私としては、なにかリングを授けたいと思い、これもエール様よりミコ様へ嘆願を通してもらい、先ごろリングとはいかないが、なにか考えるとの返事を頂いております」

「一応女生徒は献上品となっており、こちらもミコ様の何らかの加護をお願いしています」


「その技芸学校を二級に創設しようと?」

「いえ、二級はそのままテラの高等女学校を、南米とヨーロッパに創設いたします」

「これは五年制で、メイド任官課程の高女課程を併設、卒業生を小笠原高女の女専課程に、受け入れようと計画中です」


「この者たちは任官と同時に一級市民にします」

「これならばテラ・メイド・ハウスの管轄ではありますが、デヴォン島とマン島にある、ハレムの分室に受け入れさせることができます」


「なるほど……テラ・メイド・ハウスの下に、三つ四つのハレムを作る、しかも二級出身の寵妃がでても、一級市民、二級はナーキッドの権力中枢には入れない、この案ならミコ様も了承される、そういう事ですね」


「計画はそうなのですが……南米はいいでしょうが……」

「ヨーロッパはユーラシアと地続きですからね……かなり状況はまずいとは、私の耳にも入ってきています」


 ヨーロッパ地域は、ナーキッド体制から抜け出そうとしている、アフリカを支配下に置けば自立できる。

 そんな世論を作りだそうとしている一派がいるらしい。


「ロブノールの事を知らないのですかね……愚かなこと……」

 忍は何もいいませんが、うまくヨーロッパがこの計画を受け入れれば、少しはナーキッドの見る目も変わる……

「大変ですね、同情いたしますよ」


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