デヴィッドソンの女帝


 三大財閥の一つ、鈴木商会は後からナーキッドに加わったことで、ロッシチルド、デヴィッドソンの二者に比べれば非力ではある。


 当初デヴィッドソンは、ロッシチルドに比べて劣勢、力関係はロッシチルドを十とすれば、デヴィッドソンはおおむね七、鈴木商会は五といわれていた。


 デヴィッドソンはロッシチルドに対抗しようと、マルス移住の功績に対して、三大財閥と法王領正義と平和評議会に利権を与えられたガリレオ開発計画に、ミコに差し出された自らの娘アリシアを、その最高責任者として押し込むことに成功した。


 セレスティアがアリシアに入れ知恵をしたと、囁かれている。

 なにはともあれ、デヴィッドソン財閥はついにロッシチルド財閥と互角になったのである。


 デヴィッドソンは、ルナ・ナイト・シティも影響下に置いた。

 ここはマルスの歓楽都市、その昔のラスベガスのようなもの、ついにデヴィッドソンはロッシチルドを追い抜いた。


 そしてジョンが死んだ……後継はジョンの息子であった、セレスティアの子ではないのであるが。


 しかしデヴィッドソンは瞬く間に統制が乱れ、ルナ・ナイト・シティに禁断の麻薬業者が紛れ込んだ。

 そして新しい執政官、アイハンの大粛清が起こり、麻薬と人攫いの悪徳業者は一掃されたが、デヴィッドソンの力はナーキッドの中で低下することになる。


 マルスの絶対的な支配者、ナーキッド・オーナーのミコに睨まれたのである。

 デヴィッドソン一族は大騒動になった。

 かつてないことでは有るが、当主をセレスティアに変えることになった。


 セレスティアはオーナーの信頼を取り戻すのに尽力した。

 もともと個人的には、ジョンとセレスティア夫妻には好意を持っていたミコ、次のように言った。


「マルス移住に尽力した殿方たちには敬意を表します」

「そして、率いられた勢力はそれゆえ優遇します」

「しかし個人の力量で動くのではなく、組織として機能するようにしてください」


「ジョンさんは今はなく、貴女もいつまでも面倒を見ていられないでしょう」

「王朝はいつまでも続かない、聡明な貴女の事、意味は十分に分かるでしょう?」


 デヴィッドソンは緩やかな結合グループになり、実力主義になった。

 ファミリーコンツェルンから、普通のコンツェルンになった。


 一族は持ち株会社の株を全体で四割、そして個々の傘下会社の株の二割に分散、表立っての活動は控える事にした。 

 こうしてデヴィッドソンは、一度失いかけた信頼を取り戻した。


 デヴィッドソン財閥の当主、ジョンが死んで二年、セレスティアは、巨大なデヴィッドソン財閥を守り通したのだ。

 セレスティアは一族の主だったものに後継者を指名させ、自らは身を引くことにした。


 ……さてどうしましょうね、まぁせっかく刀自をいただいているのですから、ヴィーナス・ネットワーク・レイルロードで、あちこち見て歩きましょうかね。


 ジョンが頑張って、マルス移住を成功させたそのご褒美ですから、とりあえず手近なテラのデヴォン島とマン島かしらね。

 二級市民地域や、元のアメリカなども出来たら見たいわね……

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