第4話 大事な場所で屁(へ)をしてしまった男の話
昔、都のある大きなお寺でたいそう偉いお坊さんが有難い説教をしてくださるということがありましたそうな。
身分の高い人たちが連れ立ってこのお坊さんの説教を聴こうと集まりました。
さすがに、偉いお坊さんの有難い話を聞くために集まった人たちはくしゃみ一つも咳払いもしませんでした。
静かな空気の中にお坊さんの声だけが流れていました。
本当にまじめな空気の中に皆がこの偉い坊さんの声に聞き入っていました。
話は佳境に入り、大事な話にさしかかって、お坊さんが低くしわぶきをして。
「さて・・・・」と話しかけ、皆がさらに耳を側立てました。
この静かな空気を思いもかけない音が切り裂きました。
「プゥーッ。」
それは、法螺貝を吹きそこなったような情けなくも哀しい響きでした。
これにはお坊さんも、身分の高い聴衆も可笑しくて噴出しそうになりましたが、この哀しい法螺貝の主の立場に同情してこらえていました。
坊さんは説教を中断してあたりを見回しておりました。
やがて、少し気まずい空気が流れた時です。
すると、法螺貝の主と思われる男が両手を大きく広げ、そして自分の顔を覆い、真っ赤な顔をして、大きな声で叫びました。
「うあーいっ。わしゃ死んでしまいたーい!」
皆、これにはついに堪えきれなくなって、「ドッ。」と笑い出しました。
お坊さんも、身分の高い人たちも腹をかかえて大笑いしました。
ここにいた皆はお坊さんの有難い説教なんか忘れて本当に大笑い。
そして、偉いお坊さんも腹を抱えながらこっちのほうが自分の説教よりも有難いと思いましたとさ。
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