第410話 試し2


 新人が入ったので早速その力量を試すことにする。


 街から車で出ること数時間。

 周りに人が誰もいないことを確認してから、力試しの場を設営。

 天琉、廻斗、白兎の飛行できる面子で上空を旋回させ、近づいて来る車や機械種がいないかどうかを見張らせる。


 そして、始まるのはストロングタイプの機械種パラディンである剣風・剣雷と、我がチームの次席であるレジェンドタイプのヨシツネとの模擬戦。


 白銀に煌めく装甲を纏った騎士甲冑姿の剣風、剣雷。

 群青色の武士鎧を着こんだ武者姿のヨシツネ。


 銃とロボが溢れるアポカリプス世界。

 ディズトピアチックな世界観にそぐわぬ、西洋と日本の武人同士の剣による野試合が今、始まった。

 


 機械種パラディン2機が激しくレジェンドタイプを攻めたてる。

 全くの同型機種と言うこともあり、2機の連携はピッタリと息のあったモノ。


 1機が盾を構えて防御を担い、もう1機が片手剣を両手に持ち、力強い斬撃で打ちかかる。

 さらには要所で役割を交代し、動きを見切られないよう変化をつけた攻撃パターン。

 

 盾で殴りつけ、剣を縦横無尽に振り回す。

 時には剣身を輝かせ、幾条もの閃光を放つという技を見せつける。


 流石は音に聞こえたストロングタイプの騎士系最上位。

 前衛近接型では、特に同系統による集団戦、連携攻撃を得意とする機種。


 1機あれば地上に敵はいなくなり、2機いれば赤土の娼にも手が届く。

 3機揃えば紅の姫に拝謁できる。


 これはあくまで辺境で謳われた文句に過ぎないが、安定感のある騎士系最上位の実力をよく示していると言える。


 しかし、機械種パラディン2機を言えど、レジェンドタイプ、それも『剣術(特級)』と『回避(特級)』を併せ持つ、高機動近接型の極致であるヨシツネが相手では分が悪い。


 

 機械種パラディン2機による連携攻撃は、ヨシツネの機敏な動きを捕らえられずに空を切るのみ。


 斬撃、刺突、殴打、突撃、閃光、砲撃。

  

 いずれも先読みするかのごとく、軽々と躱していく。

 剣風、剣雷の2機がかりでもヨシツネに触れることすら難しい様子。



 ただ、ヨシツネの方も剣風、剣雷に対して有効打を与えていない。

 回避するタイミングで反撃しているようだが、全て盾によって防がれてしまっている。


 前衛近接型の中でも騎士系は、闘士系や剣士系に比べ防御に優れていると言われているが………



「これはやはり剣風、剣雷が、攻撃より防御重視の連携を取っているのかな?」


「おそらくそうではないかと。我がチームは後衛の砲撃手が豊富ですから、前衛があえてアタッカーとなる必要がありませんからね」


 俺の質問に隣にいる森羅が答えてくれる。


「タンクに徹すれば、攻撃の隙にダメージを喰らうことも少なくなりますし、時間を稼げば後衛からの砲撃で敵を殲滅できます。今の編成では、剣風殿、剣雷殿が前衛、若しくは、マスターの護衛を務める可能性が高いですから」


 なるほど。

 色々皆と打ち合わせをしていたが、そこまで話し合ってくれていたのか。


 しかし、2機の連携は大したものだな。

 防御重視の布陣を引けば、レジェンドタイプであるヨシツネでも攻めあぐねるほどとは。

 機械種パラディンの防御能力はそこまでか。

 

 未来視内でヨシツネが剣風、剣雷の腕試しをした時は、もっと差があったと思ったのだけど………


 うーむ………

 ちょっと違和感が………



「うん? ひょっとして、ヨシツネの奴、手を抜いている?」


「そうですね、マスターがおっしゃるようにヨシツネ殿も本気ではないでしょう。得意とされる空間転移を使用されていませんし、ヨシツネ殿にしては正直すぎる攻め筋です。おそらくはストロングタイプの少し上くらいの力量で、正面からどれくらい耐えられるのかを試しておられるのだと思います」


 ああ、それは確かに。

 アイツは本気であれば、もっと容赦の無い攻め方をする。

 それこそ、実戦なら不意打ちでも奇襲でも騙し討ちでも何でもやるタイプ。

 正攻法でも強いのに、さらに搦め手まで使ってくる、絶対に敵にはしたくない奴だ。


 それをあえて正面から当たることで、2機の力量を図っている。

 つまりヨシツネは剣風、剣雷が俺の護衛足りうるかを確認しているのだろう。


 剣風、剣雷達が加入する前のメンバーでは、明確に俺の護衛となる機種を置いていなかった。

 

 白兎は斥候だし、ヨシツネは遊撃手。

 森羅、天琉、秘彗は後衛で、浮楽がその護衛。

 俺の傍には護衛と呼ぶには小さすぎる廻斗くらいしかいない。


 豪魔はデカすぎて普段使いが難しいし、ベリアルに至っては皆と一緒に行動させること自体が危険を孕む。



「…………スペックで言えば、俺が最前衛がベストなんだけどな」


「それは勘弁して頂きたい。マスターが1番危険な最前衛というのは、我ら従属機械種にとって耐えられるモノではありません」


 まあ、守るべき主人に守られると言うのは、従属機械種にはツラい事なのだろう。

 俺自身、あえて危険な場所に身を晒したくはないが、どうしようもないこともあるからなあ。

 


 剣風剣雷はヨシツネの攻撃をしのぎ切り、一先ず腕試しは終了。

 

「良き腕です。これであれば、主様の護衛も十分に務まるでしょう」


 ヨシツネのお墨付きを貰って、剣風、剣雷は満足気な様子。

 

 未来視内においては、東部領域ルートでは街の防衛とエンジュ達の護衛。

 白月さんルートでは白月さんの護衛を行ってくれていた。

 いずれもしっかりと任務を果たしてくれていたから、何の申し分も無い。

 





「次は毘燭だな。頼むぞ、秘彗」


「はい、お任せください!」


 弾むように元気よく返事を返してくれる秘彗。

 両手に杖を掲げ、やる気マンマン。

 

「どうぞ、お手柔らかに」


 そんな秘彗に対して、丁重に挨拶をする毘燭。

 錫杖を片手に持ち、悠然と構えている。

 


 両者は30m程の距離を空け、互いに向き合う。


 これから試すのは、機械種ビショップの防御性能。

 秘彗が繰り出すマテリアル機器による攻撃をどれだけ毘燭が捌けるかの腕試し。


 

 秘彗はトネリコの木の枝に似せた杖を大きく振りかぶり、相対する毘燭へと向かって振り降ろす。


 すると、秘彗の足元からボコッとボーリングの玉くらいの岩石が出現。

 秘彗が持つ杖の先端辺りまで、フワッと浮かび上がった。


 そして、唱えられる術名。

 秘彗の可憐な唇から紡ぎ出される呪文(?)。

 


「爆ぜよ! ロックバレット!」


「重壁!」



 ガンッ!!



 秘彗が放った岩石弾は、毘燭が展開した重力壁によって阻まれる。

 マテリアル重力器によって急加速された岩石は、無形の重力壁を突破できずに砕け散った。




「次、行きます! 轟け! サンダークラップ!」


「水壁!」



 秘彗の発声とともに生まれた電撃は、地面を這うように毘燭へと襲いかかる。


 対して毘燭はマテリアル生成器による水の壁を作り出し、何百万ボルトもの電撃を押しとどめる。


 おそらく極めて純度100%に近い超純水の壁なのだろう。

 不純物を含まない水は完全な絶縁体であり、どのような高圧電流であっても通すことはない。

 わずか厚さ数10cmの水壁は完璧に電撃をシャットダウン。




「最後です! 断て! ディメンションカッター!」



 ついに繰り出された秘彗の秘奥たるマテリアル空間器による空間攻撃。

 空間操作により、三次元内の空間をずらし、範囲内に存在する物質を両断する時空の刃。

 闘神である俺ですらまともに喰らえば死を覚悟する程の凶悪な斬撃。



「空壁!」



 しかし、毘燭は慌てずに己の身に備わったマテリアル空間器を作動させ、かつて俺の莫邪宝剣を阻んだ空間障壁を打ち立てる。



 キンッ!!!



 何かが擦れるような甲高い音が響き、見えないナニカが霧散。

 秘彗の空間攻撃が、毘蜀の空間障壁によって遮られたのだろう。


 必殺と言える空間攻撃も、同じマテリアル空間器によって発生する空間障壁なら防ぐことができる。

 秘彗も毘燭と同格の機種であるが、マテリアル機器のぶつかり合いであれば、発動さえ間に合えば防御側が有利なのだ。

 


「………お見事です。ここまで完璧に防がれるとは思いませんでした」


 帽子を脱いで、毘燭へと賛辞を贈る秘彗。

 正しく脱帽と言ったところか。


「いえいえ。ヒスイ殿が手加減してくれたおかげですな。もっと連続して攻撃されていれば、とても手が回らなかったでしょう」


 毘燭は聖職者らしい謙虚な物言いで返す。

 その落ち着いた所作は、新人でありながら長年を生きた巨木のような安心感を醸し出す。


 これは間違いなく真面目組。

 秘彗が向こう側へ転んで以降、我がチーム内の力関係はお騒がし組が幅を利かせていたが、これで少しは真面目組も盛り返してくれるだろう。






 新人達の腕試しが終わると、次は発掘品の戦車の初乗り。

 七宝袋から発掘品の戦車を取り出し、一番乗りとばかりに最初に乗り込む俺。


「うーん………、やっぱり広いな」


 秘密基地の指令室にしか見えない戦車内。

 巨大なモニターが幾つも並び、車外の風景を360度漏れなく映し出す。


 座席は20以上ありそうだが、今の俺のチームの人数では半分も埋まらない。

 超重量級の豪魔は入ることができないし、ベリアルは自分の戦車以外は乗りたくないと搭乗を拒否。

 

 結局、乗り込むのは、俺、白兎、ヨシツネ、森羅、廻斗、秘彗、剣風、剣雷、毘燭、そして………

 


「あい! テンル、戦車の上に乗りたい!」


「……………まあ、戦車に張り付かれないよう戦車随伴兵も必要か」


 圧倒的な攻撃力を持つ戦車だが、接近されると機銃くらいしか対抗策が無い。

 機械種ウルフ等の軽量級ビーストタイプが多数接近してきた場合、砲撃では打ち漏らす危険性があるから、戦車には随伴兵が付き物なのだ。


 ただし、天琉だけを戦車の上に置いておくのは些か不安。

 だからここはお目付け役がいるな。



「浮楽、悪いが天琉が勝手にどこかへ飛んでいかないよう、お前も一緒にいてやってくれ」


「ギギギギギッ!」


 森羅は操縦とか砲手をしないといけないので、浮楽に面倒を見てもらうしかない。

 普段、一緒に遊んでいるように見えて、お騒がし組があまり騒がしくしないよう上手く誘導してくれているみたいだし。


 壁際の梯子を上り、天井のハッチを開けて外へと出る天琉、浮楽。

 それを見送った後、残るメンバーへと指示を飛ばす。



「よし、次は……森羅は砲手席。白兎は車長席だったな。後は皆、適当に座ってくれ………、おっと、秘彗はここだ」


「あ、はい」


 秘彗をオペレーター席っぽい所に座らせ、後は適当に散らばってもらう。


 そして、俺は操縦席に座り、発掘品の戦車『八葉車』に向かって命令。


「『八葉車』発進せよ!」







 ガラガラガラガラガラガラガラッ



 キャタピラーの駆動音を響かせ、見渡す限りの荒野をひた走る巨大戦車。

 道なき道を時速60km以上で走破する駆動力を見せつけてくれる。


 何物をも粉砕する破壊力を秘めた暴力の化身。

 高位機械種を除けば陸戦戦力としては最高峰の存在であろう。


 早くその力を試してみたいと思う気持ちが逸る。


 大枚を叩いて購入した発掘品の砲の威力を。

 主要砲弾3種を揃える万能性を。



 その機会はすぐに訪れることとなった。





「マスター、右前方2キロ先にウルフの群れを発見!数、20体以上」


 戦車内に秘彗の声が響き渡る。

 SFアニメで良く聞く美人オペレーターの声に良く似た響き。

 なぜか無性に懐かしい郷愁感が沸き上がり、思わず笑みが零れた。

 

「うむ………満足、満足……………いや、そうじゃなくて……森羅!」


「はい、榴弾を使用致します。装填用意!」


 俺の命令を受けて、森羅が砲手席で砲塔を操作。

 レバーやボタンをガチャガチャして、砲身を敵集団へと向ける。


「…………敵集団を目標に捉えました!」


「よし、発射だ!」


「はい、発射します」



 ドオオオオオオオオオオオオオン!!!



 2つの砲身から轟く爆音。


 

 数秒遅れて、遥か先で爆音が再度轟く。

 

 モニターに映るのは、2発の榴弾によって、否応なく爆砕された機械種ウルフの集団。



「………命中! 敵、壊滅致しました!」


「うむ! よくやった」



 ピコッ! ピコッ!

「森羅殿、お見事です!」

「キィキィ!」

「素晴らしい腕と砲ですな」

 パチパチパチパチ


 周りのメンバー達から称賛の声。

 見事、初戦をこれ以上ない圧勝で飾ることができたのだ。





 その後も荒野を走り回り、遭遇する機械種を一方的に叩いていく。


 機械種ゴブリンの集団を。

 機械種ケンタウロスの軍団を。

 機械種ワイルドボアの群れを。


 全て留砲の一撃を以って群れを崩壊させ、散り散りに逃げ惑うところを徹甲弾にて1体ずつ仕留めていった。

 完全にオーバーキルなのだが、辺境エリアではこの戦車に対抗できるような機種は野外ではなかなか遭遇することが無い。

 もう少し街から離れれば、ビーストタイプの重量級ともぶつかることがあるだろうが、街での予定が近日にあるのであまり遠出することができないのだ。


「もうこのエリアでは敵になる奴はいないだろうな」


「このレベルの戦車なら『砦』となった巣でも相手にできるでしょう。排出されるレッドオーダーの群れを殲滅しながら『砦』を破壊する………、いっそ、このまま『砦』を探しますか?」


 ヨシツネからの提案。

 やや面白がったようなニュアンスが感じられるので、半分冗談なのであろう。

 堅物のコイツにしては珍しい。

 ひょっとしたら、この戦車のあまりの超高性能ぶりに気が高ぶっているのかもしれない。


「それは良い提案だが、時間が無いな。それにこの辺境では『砦』になるような巣は少ないぞ。せめて中央にいかないと………」


 『巣』の攻略が潜入任務なら、『砦』の攻略は戦争だ。 

 『城』程ではないが、軍団同士の激しいぶつかり合いとなる。

 そういった戦場にこそ、この戦車の活躍する場所があると言えるが……

 

「まあ、次に時間が空いたらということにしよう。今日の成果は十分だ」


 成果と言っても、敵は全て木っ端微塵にしたので、むしろ大赤字なのだが、それが気にならないほどの満足感が心を占める。

 やはり戦車を乗り回すと言うのは、男の子のロマンなのであろう。


「さて、このぐらいにして帰るとするか………」









 街に帰れば帰ったで、しないといけないことはまだまだある。


 生活用品を買い揃えないといけないし、戦車の初乗りで気づいた足りないモノ一式も揃えたい。

 何せ座席にはクッションの一つもないのだ。

 奥の司令官席や、その周りの参謀席なんかは座り心地の良い豪華な椅子になっているが、操縦席や砲手席はパイプ椅子よりはマシな程度。

 機械種なら気にしないのだろうが、俺が座るには我慢できるギリギリのライン。


「軍仕様だから仕方ないな。他にも、戦車内に置いておく備品とかも買わないといけないし………」


 また、後で気づいたことだが、剣雷と剣風のスキル数や等級に差があった。

 これは適正級とワンランク下の蒼石でブルーオーダーしたことの違い。

 適正級だとスキルの20%~30%がブルーオーダーの衝撃で消えてしまったり、ランクダウンするせいだ。


 メインスキルは消えたり、下がったりすることはほとんど無いそうだが、同じ機種なのに差があるのは俺的には許されないこと。

 ボノフさんの店に立ち寄り、差が出ないようにスキルを購入する。




 そういった雑事を色々とこなしていると、あっという間に時間は過ぎ去り、俺にとってやや憂鬱とも言える新人狩人の交流会の日を迎えることとなった。



「面倒臭いな………」


「欠席されますか?」


「それができないから、余計に面倒臭いんだよ、秘彗」


「では、本日の予定はそのように」


 俺の秘書的な立ち位置で俺のスケジュール管理をしてくれている秘彗は、本日の予定表の交流会の箇所に『出席』と大きく書き込む。


「予定通り、マスターの随員はハクトさんということでよろしいですね」


「………まあ、連れていける機械種は1機だけらしいからな。会場の大きさの関係もあるんだろうけど」


 連れていける機械種が1機だけなら俺が選ぶのは白兎だ。


 舐められないようにする為に、ストロングタイプの誰かを連れていくことも考えなくはなかったが、どうせ今後もそれほど接点があるとは思えない面々が相手だ。

 同じ秤屋の所属ならともかく、競合相手とも言える狩人達にこちらの戦力をわざわざ教えてやるのも馬鹿馬鹿しい。

 しかも新人がメインともなれば、俺が挑む難易度の高い巣で出会うことなどほとんどないはず。


 交流会の間だけ我慢すればよいのだ。

 今回はあまり目立たずにひっそりと隅の方で時間を潰すことにしよう。









「では、後のことは任せたぞ、森羅、秘彗」


 ピコピコ


「はい、いってらっしゃいませ」


「お気をつけて」



 交流会に参加する為、昼前にガレージから出発する俺と白兎。

 俺達を見送ってくれるのは森羅と秘彗。


 天琉や豪魔、廻斗に浮楽。

 そして、新たに仲間となった剣風、剣雷、毘燭はガレージ内に留まらせる。

 また、ヨシツネとベリアルは七宝袋の中で待機。


 どうにも俺が動いた先に、予想もしない大きなトラブルが起きることが多いから、常に最大戦力を近くに置いておきたい。

 

 白月さんのルートの未来視内において、白の教会で白陽達に襲われた時、この最大戦力の3機がいなければ、俺はあそこで討たれていた可能性だってある。

 逆に言うと、この3機さえ俺が手放さなければ大抵のことは何とかなるのだ。


「この3機全部を出すようなことにならなければいいんだけど………」


 普通に考えれば、新人狩人の交流会で、魔王やレジェンドタイプを出さなければならないようなトラブルなんて考えられない。

 これは万が一の保険みたいなモノだ。

 いつもの俺の杞憂になるに決まっている………

 


 フリフリ

『人はソレをフラグと言う』


「うるせー、白兎。ただの交流会だぞ! そんなこと起こるわけないだろ!」


 ピコピコ

『2個目のフラグ、いただきました』


「クッ……」



 白兎の言うように、少しばかりフラグ臭いセリフだったかもしれない。


 一応、打神鞭で『交流会にて俺はトラブルに巻き込まれるのか?』と占ってみたが、返答は『対応による』としか返ってこなかった。


 まあ、打神鞭の占いはあくまで過去から現在にかけての情報の抽出だ。

 未来のことなんて、俺の行動によっていくらでも変わるのだから、当てようがない。



「まさか、俺のフラグ臭いセリフでトラブルが発生する可能性が上がったりしないよな?」


 

 言葉に発したことが現実となりやすくなる言霊というのもある。

 これ以上余計なことを言わずに、さっさと目的地に行くとしよう。


 白兎を従え、瀝泉槍を片手に街中へと進む。


 果たしてどのような出会いとイベントが俺を待ち受けているのだろうか………


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